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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲 公開講座&全曲演奏会 第6回 開催レポート 
〜若き巨匠、松本和将氏による ピアノ・ソナタ全32曲講座&演奏シリーズ〜
◆公開講座

2016 年
6月30日(木)10:30〜12:30 
♪ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 作品78「テレーゼ」 第25番 ト長調 作品79 第26番 変ホ長調 作品81a「告別」

  

  第6回の公開講座・後半は、ベートーヴェンの後期のピアノ・ソナタの世界へと入っていきました。傑作「熱情ソナタ」(第23番)の後、ベートーヴェンのピアノ・ソナタはどのような変化をみせるのでしょうか。第24番「テレーゼ」、第25番、第26番「告別」と順に3曲が取り上げられ、まるで別の人間が作ったようと、話が展開していきます。以下、各曲の各楽章についてのコメントの一部を、ピックアップして記します。

■第24番「テレーゼ」

第1楽章:「熱情」から4年の月日が経過。あれだけの傑作の後、次を作るのは、ベートーヴェンでも難しかったのではないでしょうか。しっかりとした緊張感から歌うような曲へと、まるで別の人間が作ったみたいに大きく変わっています。ベートーヴェンだと思って(構えて)弾かないこと。歌うように弾けばいいのです。

第2楽章:意外に難しいです。12小節目からに見られる、一つ一つのスラーが大切。これがワクワクした感じを出します。つなぎの部分など、意味不明なパッセージに感じるかもしれませんが、これはベートーヴェンのつなぎの遊び。ハッピーエンドで終わる曲です。

■第25番

第1楽章:軽い曲と思っていましたが、これ、なかなかいい曲ですね。レントラーのような舞曲風です。「カッコウ」の音型が見られることから、このソナタは「カッコウ」とも呼ばれています。でも、それを気にし過ぎると、ダカンの「カッコウ」などを意識してしまうので、あまり気にせずに弾いたほうがいいでしょう。この時期のベートーヴェンらしい、自由に歌うような音楽が見られます。

第2楽章:舟歌のような雰囲気の曲。バックハウスやバレンボイムなど、このソナタを本当に愛して弾いている演奏家はたくさんいて、素晴らしい演奏が残っています。「テレーゼ」もそうですが、論理ではなくいい表情で弾く。そういう曲は、この時期のベートーヴェンならではのものです。夢見るようなロマンティックな面が、ベートーヴェンにはあるんですね。

第3楽章:ドイツの田舎の踊りのような音楽です。大人になったベートーヴェンが、洗練した感じにまとめました。

■第26番「告別」

第1楽章(告別):「告別」と、ベートーヴェン自身がタイトルを付けました。この曲はとても難しいのですが、何が難しいのかよく分からない。確信をもってこうだと言えるところがないんですね。冒頭の三つの音のところに、ベートーヴェンは「さようなら(Lebe wohl)」と書き込みました。この三つの音に、どれだけの思いを込められるか。どれだけベートーヴェンが寂しくて不安だったのか、その気持ちになりきって弾きましょう。別れの辛さと、楽しい思い出の追憶とが目まぐるしく交差します。この時期のベートーヴェンは、以前に比べて音楽のフレーズが短く、「熱情」のように緊張感をずうっと続けるといったことがありません。気持ちの変化を素直に表しているんですね。

第2楽章(不在):僕の頭の中には、こういう情景が浮かんできます。書斎。本がたくさん並べてあって、ある人物がひとり、うつむき加減に座っている。とても辛い。神よ、なぜあなたは私にこんな試練を与えたもうたのか。応えはない。哀しみが怒りにも似た気持ちになって沸き上がってきて、いつしか思い出の世界に浸る。でも、現実はこんなにも辛くて……。そんなような流れの音楽です。

第3楽章(再会):なぜこんなに喜んでいるのか。いきなり嵐みたいになるのか? 喜びの表情がクルクル変わります。途中、何度も不安がよぎるのですが、終結部で安心感の歌。帰って来た人とのデュエットになります。本当に帰って来た! 爆発的な喜びの中で終わります。

 以上ソナタ3曲でした。難解なところは考え過ぎずに、素直にとらえればいい。いつものごとく、本当に分かりやすい講座です。次回以降さらに“答えのない世界”後期のソナタ。どんな迷宮が待っているのか、楽しみです。

(H.A.)

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