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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲 公開講座&全曲演奏会 第6回 開催レポート 
〜若き巨匠、松本和将氏による ピアノ・ソナタ全32曲講座&演奏シリーズ〜
◆公開講座

2016 年
6月2日(木)10:30〜12:30 
♪ピアノ・ソナタ 第22番 ヘ長調 作品54 第23番 ヘ短調 作品57「熱情」

 

 ピアニストの松本和将先生による「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲公開講座&全曲演奏会」もシリーズ第6回を迎え、いよいよ佳境。傑作、『熱情』ソナタの登場です。

 松本先生にとってもあらゆる曲の中で最も大事な曲で、受験で、コンクールで、海外で等々、大切な場面でずっと弾いてこられたのだそうです。講座の最初に、松本先生曰く、「ベートーヴェンが『熱情』を作曲したのが34歳の時。信じられない。全くかなう気がしません…!」ベートーヴェンへの熱い思いが、ひしひしと伝わってきました。

 さて、『熱情』ソナタ(第23番)に入る前に、一つ前のソナタ第22番から、話は始まります。規模が小さめな、のどかな感じの曲調ですが、要は考え方なんですね。「『熱情』のすさまじい嵐の前の、ほがらかな世界を見せているのかもしれません。そう考えて弾くと楽しくなる。弾き甲斐を感じます」。なるほど、第22番を単体で捉えずに、『熱情』への導入と考えると、興味がぐんとアップします。

 そして、講座は『熱情』へ。松本先生がすうっと精神統一をして、おもむろにあの有名な出だしの旋律を演奏。地底深くから不気味にわき出して来るような、低い響きです。ピーンと張りつめる緊張の糸。そして次から次へと凄まじい嵐が、容赦なしに吹き荒れます。以下、各楽章についてのコメントのごく一部を、ピックアップして記します。

■第1楽章:この曲は、タイトルは『熱情』ですが、決して情熱的な曲ではありません。これは悲劇。『悲愴』ソナタどころではない、凄まじい悲劇です。(3連符の同音連打のモチーフは)悲劇を生み出す悪魔のささやき“この悲劇からは逃れられないぞ”。天に救いを求める人間と、悪魔との壮絶な闘いです。人間は嵐に翻弄されながら、巻き込まれていきます。(無骨なまでにドシッとした演奏が推奨されました。)

■第2楽章:すごい勢いの第1楽章、第3楽章の間の花園であると、ずっと思っていました。でも、ヨアヒム・カイザーの本に、崩れさるギリギリの美を表しているとありました。この楽章でも、人間は救われそうで救われないのですね。この楽章の調性、変ニ長調は、普通に弾くと光が見える調です。ここではそれをあえて殺すことで、目には見えない恐怖感が募っていきます。

■第3楽章:なりを潜めていた悪魔が姿を見せ始めます。世界は悪魔に支配される。最後のあたりで唯一人間の声が聞こえて来るのですが、あとはずっと暗い、堕ちていく音楽です。終盤でトルコ行進曲のリズムが、すごく速く、嵐のように展開します。この辺、自由奔放ですね。もちろん最後は元の暗い世界に戻って、緊張感のうちに曲は終わります。

 講座の最後に、『熱情』が本当にすごい曲であること、この時期において最高峰、非の打ち所がないことを再確認。ここまでの高みに到達したベートーヴェンは、ここから先、どこへと向かうのでしょうか??

 講座の今後が圧倒的に楽しみです。

(H.A.)

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