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中井正子 ピアノ公開講座 開催レポート
『 J.S.バッハ:インヴェンション 』〜分析と演奏の手引き〜(全5回)
第1回 2016年 5月20日(金)10:30-12:30 
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
♪第1番 ハ長調、第2番 ハ短調、第3番 ニ長調

  

 今回のテーマであるバッハの《インヴェンション》は、中井正子先生ご自身が2011年に開講された「ピアノテクニックシリーズ」ですでに取り上げられていますが、その際は1回2時間という限られた時間の中、ざっと全曲を概観する、という形式の講座でした。今回の講座では、各回1番から順に3曲ずつを取り上げ、改めて《インヴェンション》全曲を詳しく、深く、集中的にご解説されることを意図しています。今回使用するテキストは、先生が演奏指示を担当された楽譜と、楽曲解説からなっているものですが、解説を見てみると、バロック期の音楽に特有の用語や、専門的な音楽理論用語も書かれており、バッハ演奏に際して、古典派以降の作品に臨むのとは少し異なる専門知識が求められていることがわかります。今回の講座では、先生がそれらを噛み砕き、実演を交えて説明することで、よりわかりやすく理解していただくことも、大きな目的となっています。

 楽曲に立ち入る前に、先生はテキストの序文を取り上げられました。そこに書かれていることが、《インヴェンション》という曲集全体、果てにはバッハ演奏、バロック演奏に通底するものだからです。先生のお話の中で印象的だったのが、バッハの鍵盤作品を「エチュード的」に無味乾燥に演奏すること、「ロマン派的」に自らの思い入れを持って演奏することのどちらも間違っているという問題提起です。バロック期音楽に特有の、「客観的で音楽の中に音符の形で示されている感情」にその根拠をおいたご指摘は、とてもわかりやすく、理路整然としたものでした。

 第1番から第3番までの個々の楽曲の解説では、曲全体の形式、装飾の演奏法、終止形や作曲語法など、様々な視点から楽曲を分析されながら、より具体的な曲の内容についてお話をされていました。先生ご自身「秘伝」という言葉が出るほどのその内容は、《インヴェンション》のみならず、バッハ作品、バロック作品を演奏するにあたって共通する奥深いものでした。しかしながら先生自らが演奏しながらお話されることで、その内容がとても理解しやすいものになっていたように思われます。

 《インヴェンション》は、ピアノを学び、教える際に避けては通れない道のりということもあり、会場にはピアノをご指導される先生方、ピアノを演奏される方々が多く集まり、真剣にメモをとっていらっしゃいました。先生はピアノに座りながらご熱心に、時にユーモアを交えて会場の笑いを誘いながら解説されていらっしゃいました。次回以降の講座も今回同様、先生の「秘伝」を濃く、深く、わかりやすく教えてくださる場となるのではないかと思います。

〈A.Y〉

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