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津田 真理 レクチャー & コンサート 開催レポート
ドビュッシー「版画」「月の光」「水の反映」「喜びの島」
〜解釈と演奏法〜
2016年5月11日(水) 10:30〜12:30
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 5月11日カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」に於いて、津田真理レクチャー&コンサート〜ドビュッシー「版画」「月の光」「水の反映」「喜びの島」解釈と演奏法〜が開催されました。

 まず始めにドビュッシーの生い立ちとそれに絡めた性格についてお話しされました。幼年時代の家族関係と性格や、パリ音楽院に入ってから作曲家として成功をつかむまでの道のりなど、ドビュッシーの一面を知ることができました。津田先生は演奏だけでなく言葉によって曲や作曲家について伝えることも大切と仰り、曲の背景についても丁寧に解説なさいました。

 津田先生自身も好んで弾いていらっしゃる作曲家であるドビュッシーの作品から、始めに「版画」の全3曲を演奏されました。各曲の色彩や質感を大事にされていることがよく伝わってきました。透明感な音が幾重にも重なり、立体感のある「塔」、しなやかな音で豊かな響きを生かした「グラナダの夕暮れ」、芯のある躍動感あふれる音で湧き上がるようなうねりのある「雨の庭」と、多様な音に聴き入りました。

 続いて叙情的で歌心あふれる「月の光」の解説と演奏をされました。歌曲を多く書いているからこそ、ピアノ曲であっても歌うような旋律を書くことができたと分析されていました。ルバートも生かしながら全体の拍子が統一された気品溢れる演奏で、最後の一音まで味わいながら弾いておられました。

休憩を挟み、続いては「水の反映」を取り上げられました。フランスの画家モネの睡蓮を例に挙げながら、光の状態や心理状態の変化によって見え方が全く違う自然の魅力について語られました。ドビュッシーの作品の中でも最高傑作であるこの曲と同時期に書かれた交響曲「海」との発想の関連性についても触れながら、彼の音楽に共通する自然から受ける豊かなインスピレーションを強調されました。水のきらめきや揺れ動く様子、光の当たり具合など様々な陰影や触感の感じる瑞々しい演奏でした。

 最後にドビュッシーの恋愛スキャンダルと密接に関わっている「喜びの島」を扱われました。題名の通りの喜びもありながら、その中にある焦燥、不安、苦悩の感情が、急き立てられるようなパッセージへと繋がっているとのことです。細かいパッセージまで注意の行き届いた緻密な演奏でしたが、津田さんは若い頃とは違うアプローチで弾くようになったと演奏後に仰っていました。勢いだけで弾くのではなく、曲に負けないように自分をコントロールしながらも熱くなる演奏を目指しておられるそうです。

 アンコールはドビュッシーの娘への温かな眼差しが感じられる「亜麻色の髪の乙女」と、あたかもピアノではなくギターを弾いているように感じられるコダーイ作曲「セレナード」を演奏されました。その後、質疑応答として様々な経験をお持ちの参加者からの質問に対し、真摯に参加者を励ましながらお応えになりました。津田先生のユーモア溢れ、熱心に研究されてきたことが伺えるレクチャーと、繊細さとドビュッシーへの愛情が感じられる演奏を楽しんだひと時でした。来年はリストを取り上げたいと仰っておりましたので、次回のお話と演奏を今から楽しみにしております。

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