世界的ピアニストとして国内外でご活躍の田崎悦子先生による『大人のためのピアノ・マスタークラスJoy of Music 40+』。シリーズ第7回目の今回は、2回セットのレッスンの うちの2回目です。
最初の受講生はd松晶子さん。曲目は、シューベルトの即興曲作品142の3、ラフマニノフのプレリュード作品32の12、『楽興の時』作品16の4で
す。「素晴らしい演奏になった。楽譜もきっちり読めていますよ」と田崎先生。d松さん自身は、前回のレッスンからの2週間で「長く弾いていると新鮮味がな
くなって、どう練習したらいいのか悩んでしまって」。田崎先生は「その思いが少し音に出てしまっているかな。飽きてしまう心情はもちろんわかるけれど、そ
れを超えて、作曲者の内面に深く入っていくことが大事。その上で、自分自身の音を探していくこと」とピアニストとしての姿勢を説かれました。「恥も外聞も
ない」と思ってやるのが、真のピアノの表現であるとも。一音たりとも気を抜いて弾くことはありえない、作曲家のキャラクターをしっかり見据えて演奏に反映
させる等、ピアノ表現者としてのアドバイスが中心になされました。
続いての受講生は一色久重子さん。曲目はショパンの幻想曲作品49です。「手のコントロールがうまく行きわたるようになって、多彩な表現ができていまし
た」と一大進歩だと田崎先生は喜ばれました。第199小節からの転調部分がうまく行かないという一色さんに、田崎先生は「ここはこの作品でもっとも変化の
ある部分。苦しみを表していた短調から、谷間で咲くユリを感じるようなイメージの長調で。レント・ソステヌートの部分は、天から降ってきたものをなぞるよ
うにね」とアドバイス。フォルテに向かう時は、どれくらいの割合でクレッシェンドしていくのかを逆算すること、第234小節のGesは充分に終わりと思わ
せてからFに入る等の指摘もありました。
最後の受講生は岸川薫さん。曲目はリストのハンガリー狂詩曲第6番です。「オクターブの連打が続くうちに手が疲れてしまって音がはずれてしまう」という
岸川さんに、「全部押し込んで弾いてしまうと疲れてしまうわね。オクターブをはずさないようにと手を広げすぎているけれど、指の腹で内側の鍵盤を少しつか
む感じで。弾きやすくなるし、音もきれいになる」との田崎先生のアドバイス。また、オクターブは二つの楽器が音を鳴らしているというイメージを持って弾く
ことが大事、とのこと。出だし第5小節は音の輪郭をはっきり取る、第11小節、拍の頭をはっきり、手を少し思いきって離してリズムをしっかり出す、第41
小節からのプレスト、音数が増えると音も大きくなるのでピアノのところは意識する、ショパンの作品はメロディーの上下行に沿うと自然ときれいに表現できる
のでそれを活かすようにするのが良い、等の細かい指摘もありました。
次回は10月に2回セットのレッスンが行われます。
(Y.A)
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