トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース)> 公開講座シリーズ > 松本和将 公開講座&全曲演奏会 > 開催レポート

松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲 公開講座&全曲演奏会第5回 開催レポート 
〜若き巨匠、松本和将氏による ピアノ・ソナタ全32曲講座&演奏シリーズ〜
◆公開講座
2016 年2月4日(木)10:30〜12:30  
♪ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 作品26  第18番 変ホ長調 作品31-3
会 場/
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 本日はベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会に取り組んでいらっしゃる、ピアニストの松本和将先生をお迎えして、ベートーヴェンのピアノソナタ第12番および第18番についての公開講座でした。楽譜に則した丁寧な解説はもちろんのこと、松本先生の実演も楽しむことの出来るのが、この講座シリーズの醍醐味にもなっています。

 今日の講座のメインは、しばしばピアニストの訓練のための作品として、レッスンで採り上げられるピアノソナタ第18番。有名な第17番《テンペスト》から、ベートーヴェンはピアノソナタにおいて主和音でない和音から音楽を開始する手法を用いるようになります。《テンペスト》はニ短調のドミナントから始まり、重苦しく切迫した空気が漂うのに対して、この第18番は変ホ長調のII7の和音に始まり、同じ主和音以外の和音と言っても悪戯っぽさが表れています。よって演奏する際にも、文字通りテンポや強弱への指示を守るのではなく、なぜその指示があるのか、その指示によって楽曲の進行がどのように促されるのかを考えなければなりません。例えばrit.(だんだん遅く)はその後にようやく登場する変ホ長調の主和音を強調するためだと解釈することが出来て、この主和音の登場で最もテンポが延びることでようやくその効果が現れます。rit.と書かれた瞬間に遅くしてしまうと、音楽の進行が滞るだけになってしまいます。第1楽章展開部の解説では、松本先生の講座ではおなじみの「音楽への物語付け」が行われました。この第1楽章の展開部では、冒頭のモティーフが断片化され、伴奏にも半音が巧みに用いられることで、なかなか音楽の流れが解決に至らず緊張感が走ります。このように楽譜に書いてあることや楽譜から想像したことを実現するには、当然そのための技術が必要となり、特にこの第18番の第1楽章の場合は、頻繁に現れる同音連打を美しく演奏することが必要になります。松本先生はこの同音連打の練習が演奏の質を決めることを強調し、どうやって音楽を仕上げてゆくかを示されていました。

 第12番については第18番に比べると短い時間の解説でしたが、何種類もの録音の聴き比べなど、ピアノ学習者にとっては興味深い内容となっていました。第12番はゆったりとした美しい冒頭部分が印象的な作品ですが、松本先生は聴き比べたそれぞれの演奏が、どうこの冒頭を解釈しているかを丁寧に説明し、音楽表現の可能性の大きさを提示されていました。

 今回の講座は、決して演奏会ではメジャーとは言えない2作品が採り上げられましたが、松本先生の解説を経てそれらの作品の魅力が十二分に理解できたというお客様も多かったのではないでしょうか。ベートーヴェンのさらなる深みを存分に味わえた講座でした。

(A. T.)

 ホーム(ニュース)> 公開講座シリーズ > 松本和将 公開講座&全曲演奏会 > 開催レポート