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英国ギルドホール音楽院教授
小川 典子 ドビュッシー ピアノ公開レッスン 開催レポート
2015年
10月5日(月) 10:30〜12:30
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 本日は国際的に活動するピアニスト小川典子先生をお迎えしての、公開レッスンが開催されました。レッスンを受講されたのは、いずれも桐朋学園を卒業・修了し、各コンクールで上位入賞を果たしていらっしゃる廣瀬由香里さんと石平彩香さん。既に素晴らしい演奏技術をお持ちのお2人が、小川先生のレッスンを経てさらに腕に磨きをかける過程を学ぼうと、平日の開催にも関わらずたくさんの方が聴講にいらっしゃいました。

 今回お2人が演奏されたのはドビュッシーの《前奏曲》。まずは廣瀬さんが第2集から〈ヒースの茂荒地〉〈風変りなラヴィーヌ将軍〉〈水の精〉〈花火〉を、大変柔らかいタッチで幻想的に演奏されました。一方の石平さんは第1集から〈野を渡る風〉〈アナカプリの丘〉〈雪の上の足跡〉〈西風の見たもの〉を、コントラストのある音楽創りと芯の強い音色で演奏されました。

 かなり対照的な演奏の特色をもつお2人でしたが、小川先生のアドバイスされたことは共通していました。それは「印象主義の作品は『印象だけ』で弾かない」ということでした。つまり、楽譜に書かれている音価、リズム、強弱等を正確に再現することに徹することで、逆にその演奏者の持ち味である音色を最大限に引き出すということです。「楽譜を正確に読む」ということは一見当たり前のことのように思われますが、ドビュッシーの楽譜は見る側に錯覚を起こさせるようなリズムの書き方が多い上に、楽譜通りのテンポ感で弾くにはかなりの技術と練習が必要な箇所もあるため、大変難しいことなのです。ロマン主義の楽曲でしたら、音が大幅に跳躍するところなどはルバートとそれに準じた表現をすることが出来ますが、ドビュッシーのような作品の場合は「技術的に難しいところをいかに簡単そうに弾くのかが大事」であると、小川先生は付け加えていらっしゃいました。

 「楽譜通りに弾く」ことが難しい理由はそれだけではありません。いくら演奏する本人が正確に弾いたつもりでいても、それが聴いている側に伝わらなければ意味がありません。例えば石平さんの演奏された〈雪の上の足跡〉にはppからpという強弱の変化がありますが、ほとんど弱い音を指示する強弱記号しかないこの曲においてppとpは大きな違いであり、それを弾き分けるにはかなりの音色差が必要です。また、廣瀬さんの演奏された〈風変りなラヴィーヌ将軍〉にはこの曲独特のリズムや和音がたくさん登場しますが、その面白い響きを聴かせるためには、お客さんがちょうど和音1つ1つを耳に入れることが出来て且つリズム感を楽しむことの出来る最適なテンポを選ぶ必要があります。

 小川先生のレッスンを聴くと、ドビュッシーの書き記した一音一音に改めて認識が向いて、これまで以上に《前奏曲》が奥深い作品に思えてきました。レッスンを受講されたお2人はもちろんのこと、聴講の方々も改めて楽譜との向き合い方を考え直された方は多いのではないでしょうか。大変学びの多い2時間の公開レッスンでした。

(A. T.)

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