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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ
全曲 公開講座&全曲演奏会 第4回 開催レポート
◆コンサート

2015 年11月5日(木)19:00 開演 18:30 開場 
♪ ピアノ・ソナタ 第10番、第15番「田園」、第16番、第17番 「テンペスト」
会 場/カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 ピアニストの松本和将さんによる「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲公開講座&全曲演奏会」の第4回もいよいよクライマックス。公開講座で解説してきた4曲のソナタ――第10番、第15番「田園」、第16番、第17番「テンペスト」が、今度はリサイタルという形で披露されました。

 最初に演奏された曲は、第16番でした。第1楽章での右手と左手をずらしたリズムは、講座ではベートーヴェンの茶目っ気とされましたが、本番の演奏ではそこに“緊迫感”をプラス。その日その日で微妙に違うところが、クラシックのライヴの醍醐味ですね。優美な貴婦人のような第2楽章は、自由過ぎる右手の旋律が、オペラのアリアのように素敵でした。そして爽快な第3楽章は、くつろいだ雰囲気を出しつつ身体の中では躍動するという。こうして聴いてみるとちょっと不思議で、面白い曲ですね。

 続いて第10番。花開くように可憐で美しい第1楽章は、さらりと自然なテンポ感。そう、アレグロであることを忘れてはいけないのでした。極端な強弱記号が始終付された第2楽章は、本番の演奏ではどこか神聖な雰囲気に。第3楽章は弾むリズムに流れるような展開。なるほど、楽しんで弾く楽章でした!

 休憩をはさんで、最初は第15番「田園」。第1楽章では美しい風景の中に身を置いて、空気まで感じて、満ち足りて、未来に向かって歩いていく…。自然なストーリー展開。講座を聴いておいて良かったです。そして、朴訥で誠実な第2楽章。講座ではオーケストラの楽器の音で、インスピレーションを広げたのでした。第3楽章は羽のように軽やかな躍動感。第4楽章の最後は感情の爆発。ハッピーエンドの映画のクライマックスのように輝いていました。

 ラストは第17番「テンペスト」。第1楽章はそう、神への切なる問いかけと非情過ぎる答でした。あっという間に激しい嵐に巻き込まれ、絶望の渕でもがき続ける主人公。悲惨な楽章ですが、それにしても音楽として、何て格好いいのでしょう! 第2楽章は安堵、平安。でもそれは、束の間の夢だった。切ないです…。私は今回の講座&演奏会で、この第2楽章が大好きになりました。最後は第3楽章。ついに何もなくなってしまった。喪失感、虚無感。あらゆる哀しみをかき集めたようなこの楽章は、実はこの「テンペスト」の中で、物語の終結として最も大切な楽章であるということを、今回の講座で初めて知りました。それだけでも、本当に良かったです。

 講座を聴いてから、数日のインターバルをおいて、本番の演奏を聴く。ひと味もふた味も違います!

(H.A.)

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