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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ
全曲 公開講座&全曲演奏会 第4回 開催レポート
◆公開講座

2015 年10月1日(木)10:30−12:30 
♪ピアノ・ソナタ 第15番 二長調 作品28 「田園」
 ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調 作品31-1
会 場/カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 気鋭のピアニスト、松本和将さんによる熱き「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲公開講座&全曲演奏会」も、そろそろ折り返し地点。第4回を数える今回は、4つのピアノ・ソナタ――第10番、第15番[田園]、第16番、第17番[テンペスト]――を、密度の濃い2回の講座と1回の演奏会で取り上げます。その冒頭となる、1回目の講座(第15番と第16番)の模様をお伝えしましょう。

 「ベートーヴェンのソナタの中でも、渋い2曲。今日集まった皆さんは、よほどのベートーヴェン好きか、全曲を網羅しようとなさっているのか……」。開口一番、松本さんは会場を見渡して嬉しそうにおっしゃいました。そして、きっぱりと断言。「でも、やってみるとすごいというのが分かる。ベートーヴェンはやっぱりすべての曲が練られているんです!」。さあ、面白くなってきました。このあと最初に第16番、第15番と、インスピレーションとアイディアいっぱいの講座が展開されていくのですが、そのエッセンスをダイジェスト版で記してみましょう。

■第16番

 第1楽章……最初から最後まで、右手と左手がずれているという感覚。それはベートーヴェンの茶目っ気であり、発想の面白さです。とりあえず拍どおりちゃんと弾くだけでは当たり前になってしまう。入り口に過ぎません。本来あるべき姿がちょっとずらされているという面白さを出すために、まずは右手と左手をずらさずに同時に弾くなど、いろいろな工夫をしましょう。(この他にも様々な練習法、疑問の解決法、表情の付け方、調性の読み取り方等が紹介されました。みるみるうちに、ウイットに富んだ、魅力溢れる演奏に!)

 第2楽章……ピアニストによっていろいろな速さで弾かれています。アダージョのテンポ設定の難しさ。速めにすると忙しくてしんどくなり、遅めにすると中間部がゆっくり過ぎて間がもちません。(一番速く弾くところで全体のテンポを決めたり、アンダンテで弾いてみたりするなど、しっくりくるテンポの探し方が紹介されました。)雰囲気としては、幸せなようでどこかに喪失感があるような楽章ですね。これが後期のソナタになると、満ち足りた雰囲気へと変化を遂げていきます。

 第3楽章……ぽっかり空いた穴(喪失感)を埋めるような、ほがらかな歌。最終楽章であるにも関わらず、まったりした表情で、中庸なものの難しさがあります。くつろいだ雰囲気を出しつつ、心の中、身体の中では躍動する。次第にト長調の喜びが溢れ、盛り上がっていきます。

■第15番[田園]

 第1楽章……(冒頭を弾き終えてしみじみと)素敵な曲ですよね! 遠くを見渡せる。この3小節だけで素敵。風景の中に身を置いて、空気を感じて、時間まで感じて、なんて美しいのだろう。(さらに弾き進めて)満ち足りて、そして二人になって(旋律が2本になって)、未来へ向かって歩いて行こう!…というストーリーが自然に出来上がってしまう。(10小節で出来ているフレーズ感の話、和声の話へと続く。)

 第2楽章……右手の旋律がヴァイオリンとヴィオラで、左手のスタッカートがチェロ、左手の拍頭(ベース)がコントラバス。(そしてクラリネットが入って…)オーケストラの音でインスピレーションを広げるのもいいですね。

 第3楽章……スケルツォのテンポ感が難しいです(和音だけで弾く、拍を細かく刻みながら弾くなど練習法を紹介)。中間部のトリオは天才的。右手のメロディーがたったこれだけなのに、こんなに多彩です。

 第4楽章……僕の場合、このロンドからは港の情景を思い浮かべます。左手が舟歌の音型ですし、右手は遠くを思うメロディー。遠くからやってきます。中間部の不安げな嵐を経て、最後は感情の爆発。大きく盛り上がって曲は終わります。

 松本さんは、上にはとても書き表せない豊かなインスピレーションを発揮しながら、楽譜を深く読み込み、様々な演奏の可能性を示してくださいました。「突き詰めていくとどこまでも楽しい!」ベートーヴェンのソナタの演奏は、無限ですね!!

 この講座、次回は10月30日(金)10時30分より、第10番と第17番「テンペスト」の登場です。「テンペスト」は語り尽くせないほどのストーリーがあるとのこと。楽しみです!

(H.A.)

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