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津田真理 レクチャー&コンサート 開催レポート
ラヴェル「水の戯れ」「スカルボ(夜のガスパールより)」〜解釈と演奏法〜
2015年5月14日(木) 10:30〜12:30 (10:00開場) 
会場:カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ

  

 ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院でハンス・ライグラフ氏に、更にパリ・エコール・ノルマル音楽院でジェルメーヌ・ムニエ女史に師事して研鑽を積んだピアニストの津田真理さんのレクチャー&コンサート。近年は各地でレクチャー・コンサートを活発に行っている津田さんですが、カワイ表参道のパウゼでは15年ぶりだそうです。

 今回は、今年生誕140年のメモリアル・イヤーを迎えたラヴェルの作品から、「水の戯れ」と《夜のガスパール》の3曲目「スカルボ」の2曲の他に、「水の戯れ」との比較のために、サプライズで同じ水を題材にした《夜のガスパール》の1曲目「水の精(オンディーヌ)」も取り上げました。使用楽譜はデュラン版でした。

 津田さんは、ラヴェルと彼のピアノ曲についての解説で、ラヴェルの作品はとても絵画的なので、モネの「睡蓮」に代表されるような印象派の絵画を見て、水の色や光の様子などからイメージを得てほしい、と仰いました。

 1曲目の「水の戯れ」はラヴェル26歳の時の作品で、詩人や画家など仲間たちの前で初めて披露したところ、彼らは驚いて「こんなに素晴らしい作品を書くなんて、君は本当に天才だ」と誉め称えたそうです。

 散りばめられた音が水の中から浮き上がってくるように、柔らかく滑らかに弾くとか、ピアニッシモの世界を大事にして、神秘的な音楽ととらえてペダルを多めに使って響きを保つなど、要所を少しずつ演奏しながら細かく指導なさいました。ラヴェルの作品は、特別な指示がない限り基本的にテンポは動かさず、常に一定のテンポで演奏するなど、ラヴェルに共通の大事なことも強調され、最後も、水は常に流れているので、テンポを遅くすることなく余韻を持たせて終わる、と説明し、全曲を通して演奏されましたが、一幅の絵画を思わせるような素晴らしい演奏でした。

 2曲目の「水の精」は、「水の戯れ」から7年後のラヴェル33歳の時の作品で、この7年間での彼の成長を見せているそうです。

 《夜のガスパール》は、詩人アロイジュス・ベルトランの同名の詩集にヒントを得て作曲された、ラヴェルの最高傑作です。3曲とも楽譜の最初にその詩が書かれていて、この曲には「静かな夜の湖から水の精が現れて王子を誘うが、王子は迷った挙げ句に断り、水の精は悲しんで水に消えていく」というような内容の詩が書かれています。ここでもまた素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

 休憩を挟んで3曲目は、「スカルボ」です。この曲の楽譜に載せられた詩の翻訳がプリントで配られ、「スカルボ」をイメージするのに大いに役立ちました。

 曲の冒頭の3つの音は低音のピアニッシモで大変難しいが、テーマに繋がる大事なもので、このモティーフは何度も現れるなど、演奏上の注意点を少しずつ演奏しながら細かくアドヴァイスしてくださり、また練習の仕方なども示してくださいました。

 全曲を通して演奏した後、ラヴェルは構成をよく知ると演奏も違ってきますし、知れば知る程、更に宝物が出てくる、と仰っていました。

 アンコールには、ラヴェルとは作風、性格、生活などすべて違うドビュッシーから、「夢」を演奏なさいました。テンポも自由で、揺れてもよく、ラヴェルにはないロマンティックさがあるということです。

 最後に、ペダルの使い方や暗譜の仕方、練習法などの質問に、時間を超過しても非常に丁寧に答えてくださいました。

 とても分かり易く、演奏も素晴らしい、今後も是非開催していただきたいと思えるレクチャー&コンサートでした。

(K.Y.)

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