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菅野 雅紀先生 ブラームス ピアノ曲連続講座 開催レポート
第3回 2015年 9月4日(金) 10:30〜12:30
バラード、スケルツォ、ワルツ、ラプソディ
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ

 

 9月4日、ピアニストの菅野雅紀先生による『ブラームス ピアノ曲連続講座』の第3回が開催されました。第1回のソナタ、第2回の変奏曲という大曲を経て、今回取り上げられたのは、スケルツォ、ワルツ、バラード、ラプソディという中・小規模の作品群です。それぞれのジャンルの歴史をふまえながら、各作品の概要と演奏のポイントをわかりやすく教えていただきました。

 ブラームス18歳の時に書かれた《スケルツォop.4》は、ショパンのスケルツォの第2番や第3番を彷彿とさせる要素を含む作品です。ただしショパンの作品とはコンセプトの点で明確な違いが見られ、演奏の際にもこのブラームスの独自性に注意しながら弾く(具体的には、第1主題の特徴的なリズムを3連符ふうに急がないなど)とよいとのことでした。フォルティッシモの和音をかたくならないように弾くための、指先の関節の緩め方など、具体的な演奏技術のアドバイスもためになるものでした。

 つづいて取り上げられたのは、《ワルツ集op. 39》です。ショパンというよりはウィーン=シューベルト風の16の短いワルツから成るこの曲集は、もともと連弾のために作曲されたもので、連弾版・独奏版(通常版・簡易版)・2台ピアノ版の計4ヴァージョンがあります。実はこのワルツ集と次のバラードは、今月名古屋と東京で開催される、本講座の連携企画のコンサート(『ブラームス・ピアノソロ全曲演奏会 第3回』)で、菅野先生ご自身が全曲演奏される予定の作品。曲集内のグルーピングやテンポ設計など、曲集全体の構成を見据えた視点でのご指摘が新鮮でした。

 ショパンによって創始されたピアノのためのバラードというジャンルは、一般に物語風の展開と悲劇的要素を特徴としています。ブラームスの《4つのバラード op. 10》のうち、スコットランドの民族詩「エドワード」に基づく第1番は、血塗れの恐ろしい物語を根底に持つ作品。対話的構成を持つ原詩と絡めつつ、作品の構造や、表現されている内容の人間的な深みについてお話し下さいました。第2番については、右手に頻出する幅広い音程の和音について、アルペジオの記号(波線)が書かれている部分といない部分の弾き分けをきっちり行うと素敵、という、他の作品にも応用可能なアドバイスがありました。

 最後の《2つのラプソディ op. 79》は、本日取り上げられた作品の中でもおそらく最も演奏機会の多い作品でしょう。第1番の「アジタート」という指示を、はやく前に行きたいが進めない、「ラッシュアワーの新宿駅」にたとえていらっしゃったのが大変印象的でした。第2番では、ついおろそかになってしまいがちな音の伸びやハーモニーの感じ方、ペダリングなど、実践的な側面に踏み込んだご解説をいただきました。

 菅野先生のぬくもりのある豊かな音色と興味深いお話に魅了されつつ、ブラームスの世界にやみつきになりそうな2時間となりました。

 次回11月27日はいよいよ本講座の最終回となります。どうぞお見逃しなく!

(N.J.)

 

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