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菅野 雅紀先生 ブラームス ピアノ曲連続講座 開催レポート
第1回 2015年4月9日(木) 10:30〜12:30
3つのピアノソナタ・・・大作からの出発
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ

 

 

 本日4月9日から、ピアニスト菅野雅紀先生の『ブラームス ピアノ曲連続講座』が始まりました。本講座では、全4回にわたりブラームスのピアノ曲の主要なレパートリーについて演奏を交えながら解説してくださいます。今回は、『3つのピアノソナタ』をテーマに「ブラームスは、なぜ最初に大規模なソナタを作曲し、その後には書かなかったのか?」という疑問を出発点にレクチャーしてくださいました。

 作品の解説に入る前に、ソナタの成立背景について、映像と配布されたブラームスの書簡の日本語訳を参照しながら辿りました。1853年、ブラームスはヴァイオリニストのレメーニとの演奏旅行を皮切りに、生涯の親友となるヨアヒムをはじめ様々な人物との出会いを経て、シューマン夫妻のもとを訪れます。そしてシューマンに才能を認められてソナタの出版を実現しました。

 3つのピアノソナタは、1852年から1853年に、第2番、第1番、第3番の順で作曲されているのですが、第1番から出版されたのは、「ハ長調のソナタ(第1番)から出版したい」というブラームスの意志によるものだそうです。(初の出版に際し、シューマンは室内楽や歌曲集など手に取りやすい作品を提案していたようですが・・・。)

 さて、「なぜ最初に大規模なソナタを作曲し、その後には書かなかったのか?」という問題ついて、菅野先生は、以下のように結論付けられました。ブラームスが「ソナタ」のジャンルでやりたかったことを、この3曲のソナタでやってしまったのではないだろうか。当時のブラームスは交響曲を作曲することを目標としており、ソナタはそのためのステップとして作曲されたであろうと。その理由として、後のピアノ曲は、ガヴォット、ジーグなどの古いスタイルに向かっていき、ソナタのような大規模な曲は、交響曲の創作へと向かっていったことなどを例にあげてくださいました。

 各ソナタの解説では、演奏家の視点を取り入れながら楽曲の細部にまで及ぶ丁寧なアドバイスをしてくださいました。中でも、「第3番は、第1番と第2番の要素をミックスしている」ことについての説明は印象的でした。第3番に影響を与えている要素として、第1番からは、構造の統一性、同じ旋律を様々な表現で用いることや、強弱記号や音価を細かく使い分けていること。第2番では、左右のパートで全く異なった性格の旋律を同時に使用していることを教示してくださいました。このほかにも、各ソナタで多用されているオクターヴの連続は音の広がりが欲しい時に用いていることなどなど、交響曲の作曲が念頭にあったことを考えると、上記の内容は「なるほど!」と思える発見の連続でした。

 また、第1番と第2番での変奏曲スタイルで書かれた緩徐楽章は、後に作曲される変奏曲の走りとなったという説明も興味深かったです。

 講座の締めくくりとして、菅野先生は第2番の演奏を披露してくださいました。今回は、時間の関係で第3楽章までとなりましたが、譜面に込められた意図を的確に表現されたような素晴らしい演奏でした。 

 ブラームスのソナタは一見難しそうに思えますが、菅野先生のレクチャーは、こうした作品との距離感を一気に縮めてくださったように思います。次回は、6月18日(水)『変奏曲』について解説してくださいます。

(K.S)

 

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