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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲 公開講座&全曲演奏会 開催レポート
シリーズ第3回
◆公開講座
2015 年2月5日(木)10:30−12:30 

  

 本日も引き続き、ピアニスト松本和将先生によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏・全曲講座シリーズが開催されました。今回のテーマは第20番、第9番、第11番の解説。あいにくの天候での開催でしたが、会場にはこれらのソナタについてもっと知りたいという意欲に満ちた方々が集まりました。

 今日の講座で、特に松本先生が大きく採り上げられたのは第20番のソナタ。このソナタはソナチネ・アルバムに入っているソナタの1つで、主にピアノ学習用に使用されることが多いため、あまり作品解釈という点での議論がなされる機会がありません。しかしながら、様々な質感の音色を試してみると、驚くほど楽曲のイメージが七変化します。そもそもこのソナタは、番号こそ「第20番」であり、第17番〈テンペスト〉、第21番〈ワルトシュタイン〉といった作品に挟まれているものの、成立年は最初期のソナタと同じ頃です。そのことを考慮すると、このソナタはベートーヴェンらしい質実剛健な音質で弾くだけではなく、彼の先輩であるモーツァルトやハイドンを意識した軽やかで繊細な音質で弾く方法もあるのかもしれません。ただいずれにせよ、このように色々な作品解釈の可能性を探るには、打鍵と和音のバランスに対する感覚を磨くことが大切であることを、先生は強調されました。和音を瞬間的に放つ場面の多いこのソナタでは、打鍵の際に力を入れ過ぎて手を固めてしまっては、単調な音しか出なくなってしまいます。また、落とした瞬間に指で各音のバランスを調整できないと、立体的な音になりません。このように松本先生は、このソナタの表現の在り方を様々示した上で、その表現を実現するためのテクニックの話をされました。

 第9番の解説でもやはり、和音の弾き方の重要性が話題となりました。このソナタは、松本先生自身も「なかなかこの楽曲の魅力に気付けなかった」と仰っていた通り、出だしからインパクトのある第8番〈悲愴〉に比べて、ややひそやかな作品です。そしてこの作品を魅力的に弾くためには、テーマ旋律につけられている和音の連続を絶妙のバランスと質感で演奏することと、テーマ旋律それ自体を非常に滑らかに演奏することが求められます。そして第9番が一見シンプルながらも表現が難しかったのに対し、最後に採り上げられた第11番は、一見色々な音が絡み合って複雑な響きを、解きほぐしてゆく必要があります。松本先生はこのソナタの核になっている音を示しながら、いかにこの作品の骨組みを把握しながら演奏するかをお話しされました。最終楽章では、松本先生がよく解説に採り入れられる、楽曲構成にストーリーをつけた説明がとても興味深いものでした。

 次回はいよいよ、ベートーヴェンの作品の中でも最も人気があるピアノ・ソナタ第14番〈月光〉が登場します。引き続き、松本先生と一緒にベートーヴェンのピアノ・ソナタの美しさに迫りたいと思います。

(A.T.)

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