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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲
公開講座&全曲演奏会 開催レポート 
シリーズ第2回 ◆公開講座

2014 年11月10日(月)10:30−12:30 
♪ ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 作品10-1 ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13 「悲愴」
会 場/カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏プロジェクトの一環として行われている、公開講座シリーズ。今朝はピアノ・ソナタの第5番と有名な第8番「悲愴」が採り上げられました。この第5番と第8番はともにハ短調で書かれています。ハ短調というのは、ベートーヴェンの代表作である交響曲第5番《運命》等に用いられている調であり、ベートーヴェンにとっては特別な存在だったようです。実際ピアノ・ソナタの第5番には「運命のモティーフ」と呼ばれる音型が登場し、ベートーヴェンの交響曲創作との関連も推測しえます。

第5番は、フレーズや音の重なりを丁寧に読み取ることによって、いかにこの作品の演奏に表情をつけるかということが中心となりました。第1楽章はフレーズごとに「もしオーケストラでこの曲を演奏するとすれば、どのような楽器をあてがうのか、あるいはソロなのか大人数なのか」をイメージすることで、より表現力の高い演奏を目指すことが出来ます。第3楽章では、この曲をどのようなテンポで弾けばよいかを糸口に、この曲からにじみ出ている冷徹さ、でも決して重々しくないニュアンスをどのように形にするかということが中心になりました。

第8番「悲愴」では、和声分析を交えての作品解説となりました。「悲愴」の第1楽章の特徴は「属和音」と呼ばれる緊張感のある和音や、そこに音を付け足した「減7和音」という和音を巧みに使用しているところにあります。こうした和音はすぐに安定した響きの和音に解決するのが通常ですが、この「悲愴」第一楽章の場合、延々と緊張感のある和音が続くことによって、聴き手に「いつ解決するのだろう」という感覚と、解決したときの大きな安心感が与えられます。このように和声でかなりの色付けがなされた音楽では、無理にテンポ変化等をつけるのではなく、演奏者がきちんと和声感覚を身につけていることと、楽譜に書かれた音のニュアンスをきちんと再現することが必要になります。第2楽章・第3楽章では和声だけではなくペダルの使い方や細かい指の使い方にも話題がおよび、改めて「悲愴」には、たくさんの音楽要素が詰まっていることがわかりました。

松本先生のベートーヴェン・ソナタシリーズはまだまだ続き、次回シリーズではいよいよ日本で最もポピュラーなソナタの1つ、「月光」が登場します。このシリーズを機会に、ベートーヴェンの作品により魅力を感じる方が増えることを願います。

(A. T.)

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