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ピアニスト 中井正子 シューマンの世界 公開講座 開催レポート
〜フランス・ピアニズムから見た奏法と解釈〜 第6回 
2015年3月13日(金) 10:30〜12:30
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 ピアニストの中井正子先生による「シューマンの世界」公開講座の最終回。全部で6回にわたるシリーズの最後を飾るのは、大曲「クライスレリアーナ Op.16」です。その日も朝から熱心な聴講者の皆さんが、楽譜を手に集まりました。

 まずはシリーズ恒例、楽譜のお話。何版を使うかですが、できればヘンレ版の新しい楽譜をお勧めする、とのことでした。親切な解説が追加されているのだそうです。

 確認してみると、かつてのヘンレ版は表紙の上の方に大きく『SCHUMANN』と書かれていましたが、新しいヘンレ版は同じ位置に『Schumann』とやや小さめに書かれているので分かりやすいです。新しい版では、“初版ではこういう音になっていた”などといった版による音の違いが譜例で分かりやすく示されていて、音の違いに迷った時などにとても参考になるとのことです。

 ブライトコップフ版はクララ・シューマン版で、クララがどういう風に弾いていたかが分かる―。ヘンレ版はシューマンが書いた原本により近い―。それは、どちらかが間違いなどということではなく、こういう違いがあるのだ、という風に捉えれば良いのだそうです。

 作品にまつわるエピソードについても、様々な角度からお話が展開されました。作品を献呈する相手がクララからショパンになった経緯、シューマンが遺した数々の手紙をヒントにすると良いという話、などなど。

 さらにはシューマンの作品におけるキーポイントである、文学的な背景について―。「クライスレリアーナ」の創作に関してはE.T.A.ホフマンの小説「牡猫ムルの人生観」から触発を受けていて、特に登場人物である楽士クライスラーというキャラクターに要注目である、とのこと。「クライスレリアーナ」というタイトルにしても、同じE.T.A.ホフマンの短編のタイトル「クライスレリアーナ」をそのまま借用しているのだそうで、こちらでもクライスラーは主要な登場人物になっています。

 楽士クライスラーは、各調性のキャラクターについて詳細に語っていて、その言葉は、シューマンが作品を創作する上での調性の選択について、大きなヒントになっていると考えられるのだそうです。これは読んでみたいですね!

 そして、この講座のメインと言えるでしょう。「クライスレリアーナ」全8曲を演奏しながらの、実際の演奏法や楽譜の読み方についての詳細なアドバイス。例えば……8つの幻想曲として捉えることについて、楽曲の構造について、書かれている楽語の意味、調性について、テンポ、アーティキュレーションの加減、アクセント記号の捉え方と音の出し方、シンコペーションなどのリズムの取り方、オクターヴの弾き方、響きのバランス、ペダリング、バロック時代の組曲や幻想曲がベースにあり多声的に書かれていること、などなど。アドバイスの合間に次から次へと流れるように演奏される「クライスレリアーナ」がとにかく素晴らしく、うっとりと聴き入ってしまいました。

 中井正子先生による今後の講座は、ショパンの小品やコンチェルトが予定されています。乞うご期待です。

(H.A.)

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