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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲
公開講座&全曲演奏会 開催レポート 
シリーズ第1回

◆公開講座
2014 年7月8日(火)10:30−12:30 
♪ ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 作品2-3 ピアノ・ソナタ 第6番 ヘ長調 作品10-2
会 場/カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 ピアニスト松本和将先生による「ベートーヴェンピアノソナタ全曲公開講座&全曲演奏会」公開講座の第2回がパウゼで開催されました。「ピアノの新約聖書」とも評されるベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会のみならず、演奏会と並行して「公開講座」も執り行われるという空前のシリーズ。一段と大きなプロジェクトにファンの熱い期待と注目が集まります。

 松本先生は、ベートーヴェンのソナタにおいて本質的なこととして「同じ主題から如何に多用な展開を可能にしているか」という点を挙げられました。たとえば、今回採り上げられた第6番ヘ長調作10-2第一楽章の動機部分と、前回採り上げられた第2番イ長調作品2-2の動機部分は大変酷似していますが、展開や雰囲気は全く異なります。

 また、松本先生によれば、ベートーヴェンの和声進行はたとえばラヴェルやドビュッシーのそれと比べてより複雑な響きから様々な印象を紡ぎ出すことを目指したものではなく、明快な構成感に裏打ちされた大変シンプルなものです。そして、そのシンプルさの中に如何に壮大な音響や様々な創意工夫を盛り込むかということが楽曲全体の特質を掴む一つの鍵となっていることに折々に具体例を挙げられながら言及されていました。今回の講座全体を通しても、まず和声進行に着目し、大きな流れを抑えたうえで、個々のフレーズ、リズム、装飾の意味を確定させていくという極めて厳格な手続きを順守されていました。

 そして、筆者においてとりわけ印象深かったことは、何といっても松本先生のタッチの素晴らしさです。松本先生は個々のフレーズや楽想の意味について言及されるとき、他の作品との関連(たとえば、今回では第3番ハ長調作2-3第一楽章の楽想と交響曲第5番「運命」の最終楽章の楽想との類似点が実演において示されました)や詩的なイマジネーション(とりわけ、第3番の緩徐楽章のイメージが恋愛に関連させられて語られたことは印象的でした)について非常に豊かに語られるのですが、それが単に言葉だけの解説に終わることは決してありません。ピアノに触れる直前の瞬間から作品の世界に聴き手を弾き込んでしまう魅力において、聴く者を自ずと説得し、納得させてくれます。

 松本先生によれば、そうした深い作品の理解とそれを表現する高いテクニックを身に着けるためには、「心・技・体」において音楽を理解しようとする態度が大切であるそうです。心とは感受性、技とは和声やリズム、構成における楽曲の音楽的な理解、体とはテクニックのこと。「感じ、理解し、奏でる」というこの順番が守られてこそ、より高い境地を目指して行けるということでした。7月17日(木)には、今回と前回の講座で取り上げられた楽曲によるコンサートがパウゼにて開催されます。どうぞお聴き逃しなく。

(G.T.)

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