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松本和将 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲
公開講座&全曲演奏会 開催レポート 
シリーズ第1回

◆公開講座
2014 年6月12日(木)10:30−12:30 
♪ ピアノ・ソナタ 第1 番 ヘ短調 作品2-1 ピアノ・ソナタ 第2 番 イ長調 作品2-2
会 場/カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 本日はピアニストとしてご活躍中の松本和将先生が、ベートーヴェンのソナタ第1番・第2番についてレクチャーをされました。これらベートーヴェンの初期ソナタは、しばしばピアノ教育の場で練習用のレパートリーとして扱われることも多く、なかなかその真価が問われてきませんでした。しかしながら松本先生は、ピアニストとして楽譜から何を表現するか、という視点から本日のテーマである2つの作品を解説されました。

 まずソナタの第1番・第2番は全体を通して真逆の性質を持っていると言えます。第1番はヘ短調という当時あまり例を見ない調で書かれている上に、緊張感を生み出すドミナントと呼ばれる和音が駆使されており、一貫して「悲劇」の要素が強くなっています。それに対して第2番は、後年ベートーヴェンのオーケストラ作品に用いられてゆく手法が既に垣間見えており、「多彩」という印象が強くなっています。よって第1番では、作品の奥底に潜む嘆きや絶え間ない緊張・不安を引き出してゆくことが大切であり、第2番ではオーケストラのあらゆる音色を想像しながら音楽創りをしてゆくことが求められます。

 第1番で特に興味深かったのは、先ほど挙げたような和声の話はもちろんのこと、テンポの持って行き方のお話でした。第1番では終楽章など、ある時点から急激に曲調の変わる場面が目立ちますが、その度に曲のテンポまでが変わってしまっては、この作品の特徴である「緊張感」をうまく表現することができません。あくまで同じテンポ感の中でいつの間にか表情が変わっている、という感じで演奏した方が、現実と幻が交錯したように曲を持ってゆくことができます。

 第2番でとりわけ会場からなるほどという声が上がったのは、先生が管弦楽の手法に例えて第2楽章の説明をされたときでした。ベートーヴェンはしばしば管楽器と弦楽器が同時に演奏する場面で、管楽器には長く音を伸ばさせ、弦楽器にはピッツィカートをさせることによって、美しいメロディーの中にもどこか芯のあるような効果を出していました。こうした効果はピアノの独奏曲でも用いられており、それが如実に表れているのが第2楽章になっています。先生は他にもオーケストラの他の楽器やジャンルを引き合いに出しながら第2番のソナタの魅力について語っていらっしゃいました。

 次回の先生の講座では、こちらもやはりピアノ学習者にはお馴染みの第3番・第6番のソナタが登場します。引き続き、松本先生の音楽に対する鋭い感性からどんなお話が出てくるのか、楽しみです。

(A. T.)

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