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ピアニスト 中井正子の「ショパンの大曲を弾く!」公開講座 開催レポート
第3回
 2014年7月29日(火)10:30 〜 12:30   
ピアノ・ソナタ第3番Op.58
 
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 ピアニスト中井正子先生による『ショパンの大曲を弾く!! 』ピアノ公開講座――本シリーズ最終回に取り上げられたのは、《ピアノ・ソナタ第3番ロ短調Op. 58》である。この作品は、フランス中部に位置するノアンの地で1844年夏に作曲された。ショパン(1810~1849) は、この地にある恋人ジョルジュ・サンドの邸宅で数年にわたり夏を過ごし、多くの名曲を生み出した。この曲もそのひとつである。講座では、曲の構造に関する解説と、それに基づく演奏のヒントが教授された。

 ソナタ形式で書かれた第1楽章は、第1主題が提示された後、第8小節からその主題が確保され、第19小節から移行部となる。この移行部は、2つのまとまった部分(23〜28小節と31〜40小節)と、その他のつなぎ部分から成っている。こうした曲の構造を知ることで、音楽の作り方が自然と見えてくると中井先生は語られていた。演奏者にとって、分析は分析すること自体が目的なのではなく、たとえ「移行部」という用語を知らなくとも、さして問題ではない。しかし、その箇所が移行部であると認識することにより、ルバートをかけて過剰な表現をするのではなく、さらっと前へ進むことがふさわしいとわかる。曲がどのように作られているかを知ることは、演奏を組み立てる上で非常に重要なことなのである。

 弾き方についても、様々なアドバイスが具体的に示されていた。例えば、第1楽章冒頭、右手で弾く5つの音のかたまりは、手の重みを利用して一つ一つの音にニュアンスをつける。2小節目2拍目の和音は、飛び出さないように1拍目の響きの中から出てくるように弾く。その後の和音の連続は、音のバランスに気を配り、ハーモニーで音楽を進めながらフレーズの終わりまで持っていく――など。技術上の難所では練習方法も示され、演奏に取り組む者にとって貴重なアドバイスとなっていた。

 中井先生は、実際に演奏してみせながら、なぜそのように弾くべきなのか丁寧に解説を進めておられ、本講座にはショパンのソナタという大曲をどのように解釈し演奏するかを考えるためのヒントがたくさん詰まっていた。秋からは、シューマンの作品を取り上げた講座をスタートされるということなので、こちらも楽しみにしたい。

(Y.T.)

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