トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > ピアニスト中井正子の「ショパンの大曲を弾く!」公開講座 > 開催レポート

ピアニスト 中井正子の「ショパンの大曲を弾く!」公開講座 開催レポート
第2回
 2014 年6月27日(金)10:30 〜 12:30 
ピアノ・ソナタ第2番Op.35
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

   

 毎回好評を博しているピアニスト中井正子先生によるピアノ公開講座。『ショパンの大曲を弾く』第二回の今回はピアノソナタ第2番変ロ短調Op.35が採り上げられました。この作品は続く第3番のソナタと共にリサイタルで頻繁に採り上げられるレパートリーの一つですが、第3楽章の有名な葬送行進曲が最初に創られその後残りの楽章が加えられたと言われる複雑な成立事情とも関連して、ソナタとしては大変風変わりな楽想と構成を持つ一筋縄ではいかない難曲としても知られています。私たちが作品の神髄の理解に近づくためにはどのような点を踏まえるべきなのでしょうか。

 中井先生が様々な個所で繰り返しご教示下さったことの一つには、和声上の様々な「仕掛け」の意を見抜き、正確に理解するということが挙げられます。たとえば、第1楽章の序奏部部分では、わざと臨時記号を用いて主調の変ロ短調ではなくあたかも嬰ハ短調であるかのような導入があり、またとりわけ展開部では擬終止の多用や異名同音を用いた転調の多用によって「屈折した」展開を創り出しています。そうした様々な創意工夫の具体的な意味を構成とハーモニーとの関連から正確に読み解くことの重要性が示されました。

 第二に、この作品全体の大変「グロテスク」な性格に関連して。中井先生によると、たとえば第2楽章のスケルツォなどは「死の舞踏」がイメージされているということで、この3拍子のリズムの感じ方も軽快なワルツではなくあたかも悪魔が狂喜乱舞して踊り狂っているような「メフィストワルツ的」なものであるべきだということでした。ショパンの他の作品にも通じる書法がここかしこに現れつつもそこにこの曲独自の陰影が刻まれていることが理解できました。

 第三に、各楽章の象徴的な意味と全体の筋立てをどのように理解するのかということ。非常にグロテスクな楽想や屈折した展開を持つ第1楽章から死の舞踏のスケルツォが続き、第3楽章の葬送行進曲に至り、「墓場に吹く不吉な風」を連想させる短いユニゾンのプレストに終わる。とりわけ第3楽章の葬送行進曲においては、冒頭で示される一度と六度を行き来するハーモニーが「教会から聴こえてくる鐘の音」に喩えられたり、左手のトリルが行進の太鼓を連想させるなど作品のイマジネーションを豊かな表現で解説して下さいました。堅固な構造を持つソナタのお手本とは必ずしも言えないものの、その詩的な意味はそれを補って余りある魅力を備えていることが示されました。

 最後に中井先生はこの作品が作曲されたノアンの風景を映像で紹介してくださいました。作品を譜面に即してあくまで音楽的に検討した後に観る「原風景」としてのノアンの美しい情景に筆者も会場の多くのお客様と共に大いに心動かされました。シリーズ最終回の次回は、第3番のソナタ。2番とは全く異なる3番の世界を中井先生がどのように示してくださるのか、筆者も今から楽しみです。

(G.T.)

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > ピアニスト中井正子の「ショパンの大曲を弾く!」公開講座 > 開催レポート