トップページ

コンサート情報

トピックス

概要

KMFミュージックフレンズ

CDメディア

リンク

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > 今峰由香公開講座 > 開催レポート

今峰由香 公開講座 開催レポート
〜「ヨーロッパのレッスン風景 第3弾」〜
2014年
4月18日(金) 10:30 〜 12:30
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 ミュンヘン国立音楽大学教授今峰由香先生によるピアノ公開講座〜ヨーロッパのレッスン風景〜第三弾がパウゼにて開催されました。20年に渡ってヨーロッパと日本で活躍されている今峰先生ならではの視点が大変貴重なこの講座。会場も開演前からの賑わいようでした。

 今回の講座のテーマは「本当に音を聴くということ」です。今峰先生のご経験から言っても、「指が回る」という意味での純粋なテクニック面に限定するならば、日本も決してヨーロッパに劣ってはいないそうです。しかし、「自分の演奏している音をどれだけ聴き、理解しているか」という点になると、日本の音楽教育の現場においてはまだまだ十分とは言えないということでした。そこで、今回の講座では主に音色の変化やアーティキュレーションという観点から、モーツァルトのイ短調のソナタKV310とシューベルトの即興曲変ロ長調Op.142-3を採り上げて下さいました。

 まず、モーツァルトにおいてとりわけ印象深かったのは、単にアーティキュレーションを表面的に解説するのではなく、様式や構造と共に大変イマジネーション豊かに解釈が試みられていたことでした。たとえば、今峰先生はスラーについてそのドイツ語のBogen(=弓)を引き合いに出されながら弦楽器の奏法の具体的なイメージを通してイ短調のソナタのスラーをどのように解釈するのか、ということを示してくださいました。また、第二楽章ではオペラのアリアの情景を例に挙げられたり、「疾風怒濤」の第三楽章における中間部のアルペディバスはオルゴールの音色に喩えつつ、強弱のあり方やペダルの踏み変えについて解説されました。

 また、シューベルトにおいてもシューベルト特有のさすらいの情感がどのようにリズムやハーモニー、構成に反映されているのかという点に触れつつ、運指はどのようにあるべきか、各声部の弾き分けにそれぞれどのような意味があるのかということが明快に語られました。

 そのレクチャーを踏まえての誰もが納得の今峰先生の素晴らしい実演。会場からは深く肯く様子や今峰先生の美しいピアニズムに聞き入っておられるお客様の様子が伝わってきました。今峰先生によれば、「本当に音を聴く」ためには単に音感だけの問題ではなく、日頃から音楽についての深く幅広い知識だけでなく、音楽以外の美術体験や読書など豊かな感性も磨くことがとても大切であるとのこと。目まぐるしく情報が飛び交う現代生活の中で「本当に音楽を愛し、奏でる人」を育むための豊富な知恵に溢れた素晴らしい講座でした。

(G.T)

 ホーム(ニュース) > 公開講座シリーズ > 今峰由香公開講座 > 開催レポート