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西原 稔 公開講座 開催レポート
ベートーヴェン「ピアノソナタ」再発見
《東京》
「楽譜から読み解くピアノソナタ (第4回)」
日 時:2014年3月20日(木) 開場10:00 開講10:30 
講師:西原 稔
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 毎回好評を博している西原稔先生の公開講座。本日はベートーヴェンのピアノ・ソナタから、ヘ短調で作曲された3曲、≪選帝侯ソナタ第2番≫、ピアノ・ソナタ第1番、第23番≪熱情≫について、豊富な譜例や音源をご提示されながら解説してくださいました。

 はじめに、≪選帝侯ソナタ第2番≫についてです。この作品は、1782年から83年にかけて作曲され、当時集中的に勉強していたモーツァルトの作曲技法と、エマヌエル・バッハの作品からの影響が表れているとのことです。ベートーヴェンの作品とは思えないほど、二人の作曲家の特徴が凝縮されていることに驚きました。先生は、第1楽章5小節目からの右手のオクターヴの上行で緊張感を高めたり、音価を細分化する表現は、後のピアノ・ソナタ第1番にも用いられることをご教示くださいました。

 続いて、ピアノ・ソナタ第1番です。まず、第1楽章の提示部を初版譜と5種類の校訂譜(Henle版、Universal版、Breitkopf &H較tel版、Royal School of Music版、春秋社 小島新校訂版)を比較され、相違点をご説明されました。クレッシェンドやスタッカートなどの表示が楽譜によって解釈が様々でした。そのため、先生は「校訂譜は編集者の判断が入るためそれぞれ比較することが大切」と述べられておりました。また、後に作曲される≪熱情≫との関連性として、運命動機や同音連打などがあります。その他にも、第2楽章では、 1785年に作曲された≪クラヴィーア四重奏曲第3番≫の第2楽章がもとになっており、ベートーヴェンはヴァイオリンも演奏していたことから、弦楽器のイメージで作曲する傾向があることや、第4楽章では、pとfや音域の広さにより強弱の対比を表現していることから、当時、主に用いていたチェンバロとオルガンではなく、フォルテピアノで作曲したことを明示しているとのことなどを丁寧に解説してくださり、興味深く拝聴いたしました。

 最後は、第23番≪熱情≫です。このソナタは、1803年に寄贈されたエラールのピアノの音域(下一点へ音から四点ハ音)を最大限に用いて作曲されています。ここでは、スケッチを用い主題の構造や、音域ごとに細かにセクションが分けられていることなどをわかりやすく示して下さり、非常に綿密な計画でもって作曲されていることがわかりました。このことから、「作曲のプロセスを考えながら楽譜を読むことが大切」と仰っておりました。

 このスペースではお伝えしきれない事柄も多々ございましたが、関連作品なども多数ご紹介されながら、きめ細やかなレクチャーをしてくださいました。密度の濃い充実した2時間でした。

(K.S)

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