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久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『一歩上を目指すピアノ演奏法vol.5』(全5回シリーズ)
第4回 2014年4月23日(水) 10:30〜12:30
♪バッハ :インヴェンション 第5番、第6番
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
毎回好評を博している、ピアニスト久元祐子先生の『一歩上を目指すピアノ演奏法』講座。今回は、第2回目と同じく、受講者の皆様からの要望が多かったバッハのインヴェンションについてです。バッハの原典版の譜面には、強弱やアーティキュレーションなどの指示がないため、演奏者はそこからいかに音楽を読み取り、色づけをするかということが求められます。本日は、第5番と第6番を例に、演奏上のテクニックや解釈の仕方を丁寧に解説してくださいました。このスペースではほんの一部の紹介となってしまいますが、2曲に共通して述べられた内容をお伝えいたします。
インヴェンションを譜読み、分析する際に重要となるポイントは、主に以下の3点です。
1. 曲全体で各部分の区切りとなっているカデンツ(終止形)を探します。
2. 調性の動き方について考えます。バッハは、カデンツ、強調したい音や和音を弾くときに少し間を置くこと以外はテンポを揺らさないため、調性でもって曲の表情を変化させます。したがって調性の展開の仕方は非常に大事な要素となります。なお、今回題材となった2曲共に、遠隔調が登場する箇所がクライマックスとなっています。
3. テーマと対旋律の音型(音程や音の動き方など)を見て、それぞれのアーティキュレーションの施し方を考えます。各音型の一度決めたアーティキュレーションは、最後まで必ず統一します。そして、音楽が緊張と弛緩(解決)する場所も考えつつ、曲全体でそれぞれの音型がどのように展開されるかを観察していきます。
以上の3点に加え、ペダルや装飾などの技術的なアドバイスをしてくださいました。中でも、筆者の印象に残ったのは、タッチについてです。インヴェンションでは、一音一音に重要性がありますが、全ての音を重く弾いてしまうと調性の移り方や音型の表情が見えなくなってしまいます。そのためにも、左右のハーモニーのバランスを考えつつ、モティーフごとにアーティキュレーションばかりでなく、タッチを使い分けなければなりません。(例えば、第5番では16分音符の対旋律を弾くときに音符同士で強弱の差を付けること。第6番では、冒頭の左手の旋律は各音ともに少し切れ目を入れながら鍵盤の下まで弾き、4小節目の右手の旋律は、コロコロと軽いタッチで弾くことなど。)インヴェンションをピアノで弾くときは、チェンバロを意識し全て強く弾いてしまいがちですが、複数のタッチを同時に弾き分ける難しさがあるものの、このことは、チェンバロではなく強弱のコントロールができるピアノならではの魅力であると思いました。
最後に、久元先生は「インヴェンションは基礎に立返るもの。」述べられておりました。一見シンプルですが、技術的にも音楽的にもあらゆるものが要求されるため、その中に秘められた難しさを改めて実感いたしました。
次回はいよいよ最終回です。5月15日(木)「ショパンとプレイエル・ピアノ」をテーマにお話しくださいます。
(K.S)
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