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久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『一歩上を目指すピアノ演奏法vol.5』(全5回シリーズ)
第3回
2014年3月7日(金) 10:30〜12:30
♪「原典版で弾きたい モーツァルトのピアノ・ソナタ」
 参考書:アルテス「原典版で弾きたい! モーツァル トのピアノ・ソナタ」
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

  

 3月7日、パウゼでもおなじみの久元祐子先生による演奏法講座が開催されました。今回は、昨年9月に出版されたご著書『原典版で弾きたい! モーツァルトのピアノ・ソナタ』(アルテスパブリッシング)を題材に、楽譜の種類からソナタ全体の概観、具体的な演奏法まで、モーツァルトにアプローチするためのエッセンスを多角的にご紹介いただきました。演奏や教育のみならず執筆活動にも精力的に取り組まれている久元先生ですが、そのすべての要素が有機的に結びついて展開されるのが、こうした公開講座ならではの魅力です。

 講座の前半は音楽学的な観点からのお話を中心に展開されました。はじめに、「原典版」とは何か、どうして複数の原典版の間に違いが生じるのかといった事柄を、下敷きとなる1次資料(手稿譜、印刷譜など)の問題に触れながら分かりやすくご説明くださいました。次に、モーツァルトが過ごしたミュンヘン、マンハイム、パリ、ウィーンの各地での伝記的・音楽的な出来事と、それぞれの都市で作曲されたソナタについてのお話があり、作曲家が歩んだ道のりとその作品の全容とを大きな流れの中でつかむことが出来ました。ハイドン、J.C. バッハといった他の作曲家とのつながりや、使用楽器についてのお話も興味深いものでした。

 つづいて、いよいよ音楽的な内容に入っていきます。旋律の魅力や形式美といったモーツァルトの作品ならではの特性を演奏でうまく引き出すにはどうすればいいのか、具体的な作品例と実演を通して、久元先生はひとつひとつじっくりと解説してくださいました。「原典版」とは一般に、「作曲家の意図」をもっとも忠実に反映した楽譜、と考えられていますが、その反面、目に見える情報量が最も少ない楽譜である、ともいえます。悩みどころであるデュナーミクやアーティキュレーション、ペダリング、装飾音の解釈に関しても、幅広い典拠に基づいて、理論と実践、知性と感性の両面のバランスのとれた明快なアドバイスが提示されました。子どもにどのように教えたらよいか、といった教育者としての視点が織り込まれていることも久元先生の講座の魅力の一つ。長年にわたってモーツァルトの音楽の演奏と研究に力を注いでいらっしゃる先生ならではのメッセージが詰まった、充実の2時間となりました。

 次回4月23日の講座では、第2回に引き続きバッハのインヴェンションが取り上げられます。「一歩上」の演奏、レッスンを目指される先生方に是非ともお勧めしたい講座です。

(N.J.)

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