| |||||||
|
|
久元祐子 ピアノ演奏法講座 開催レポート
『一歩上を目指すピアノ演奏法vol.5』(全5回シリーズ)
第2回 2014年2月12日(水) 10:30〜12:30
♪バッハ: インヴェンション 第3番、第4番
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
2009年より開催されている久元祐子先生の演奏法講座『一歩上を目指すピアノ演奏法』。今年第2回の本日は、受講者の皆様からのご希望が特に多かったというバッハのインヴェンションの中から、第3番・第4番の2曲が取り上げられました。
インヴェンションといえば、いうまでもなく、ピアノ学習者にとって避けては通ることのできないレパートリーの一つです。一方、今日使用されることの多い、いわゆる「原典版」には、強弱やアーティキュレーションといった演奏上の指示が基本的に書かれていません。バッハの弾き方を生徒さんたちにどのように教えればよいのか、どうすればその演奏をより魅力的なものにできるのか、日々お悩みの先生方は少なくないことでしょう。今回の講座では、それぞれの曲のアナリーゼを中心に、作品解釈の方法や演奏上のポイントがきめ細やかに解説されました。
作品分析には、いずれの曲でも大まかには次のようなプロセスが含まれていました。
・曲の全体を見渡して、区切りとなっている終止形(カデンツ)を見つける。
・各部分の調の性格や、調の揺れ・推移などをみる。
・テーマ(主旋律)と対旋律を見つけ、そこに含まれる音型を観察する。
・作品の進行にそって、音型がどのように展開されているのかを確認する。
・最後にもう一度曲全体を見渡し、緊張や解決のポイントをみきわめる。
もちろん分析ばかりではなく、トリルの入れ方やペダルの用法、あるいは保続音のトリルでタイがついている場合はどうすればいいのか、といった細かい疑問点にもしっかり答えてくださいます。テクニック上のコツや練習の仕方も分かりやすく教えてくださり、客席からもたびたび納得や感嘆の声が上がっていました。
久元先生の演奏法講座の魅力は、模範演奏をただ示されるだけではなく、ある解釈にいたるまでの論理の筋道や、そのような弾き方がふさわしいと思われる理由を、細部まで必ず言葉で明快に説明してくださることです。先生ご自身も強調なさっていたことですが、音楽大学の授業などで学ぶ「楽典」は決して音楽の実践から遊離した無味乾燥な理論ではなく、演奏解釈のための豊かなヒントに満ちたものであるということを、講座全体を通じて改めて実感させられました。
次回3月7日(金) の講座では、モーツァルトのピアノ・ソナタが扱われる予定とのこと。こちらも大変楽しみです。
(N.J.)
|