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演奏&おはなし
田中正也と巡るプロコフィエフ ピアノ作品の世界Part2 開催レポート
〜ピアノソナタへの近道〜
講師:田中正也(ピアニスト)

第2回 2013年9月27日(金) 10:30〜12:30
ピアノソナタ第4番 Op.29 古い手帳より 第5番 Op.38(オリジナル)/ Op.135(改編)

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 人気連続レクチャーコンサート『田中正也と巡るプロコフィエフピアノ作品の世界』Part2「ピアノソナタへの近道」の第二回目の本日では、ソナタの4番と5番が採り上げられました。プロコフィエフのピアノソナタと言えば、3番や「戦争ソナタ」が有名ですが今回は比較的演奏される機会の少ない4番と5番。スペシャリストの田中先生のお話と演奏を筆者も非常に楽しみに出かけてきました。

 前回聴かせて頂いた3番のまるで水面から白鳥が一斉に羽ばたくかのような美しいイントロダクションが記憶に新しいですが、今回最初に採り上げられた4番ハ短調では一転して深いメランコリーを讃えた叙情的な音楽。田中先生によれば、この作品はプロコフィエフの前半生において深い影響を与えた友人シュミットゴフの想い出に捧げられているとのこと。シュミットゴフはプロコフィエフの極めて親しい友人でしたが、失意の中ピストル自殺という非業の死を遂げた悲運の人でした。第一楽章においては死の影が一歩一歩忍び寄るようなバスの上昇する半音階と交錯するいずれも深い哀愁漂う三つの主題、第二楽章においては執拗な持続低音から時折垣間見える粉雪が舞い降りるような美しい情景、第三楽章においては、憂鬱を吹き飛ばすような疾走する華麗さがそれぞれ印象的でした。

 続いて5番ハ長調のソナタには、パリ時代の1923年の初版と最晩年の1953年の改訂版が存在しますが、田中先生は今回敢えて比較的演奏の機会の少ない初版を中心に演奏とレクチャーを進められました。まず、初版が全曲通して演奏され、会場にはプロコフィエフのイメージを一新するような晴朗な音楽によって満たされました。田中先生によれば、パリ時代に作曲されたこの初版はとりわけ「おしゃれ」なのだそうで、改訂版との違いも参照されながらこの初版の魅力についてたっぷりと語ってくださいました。

 田中先生のレクチャーコンサートの最大の魅力は、そのイマジネーションの豊かさにあり、一般にはまだまだ難解なプロコフィエフ作品の魅力を文字通り「体感」できることです。楽譜の奥にある深い詩情から作品の本質を理解し、その優雅な演奏スタイルにおいて余すところなく作品の魅力が引き出されてゆく光景には魅惑されずにはいられません。集われたお客様も大変ご満足の様子で、こうなると後期のソナタについても田中先生によってどのように新たな魅力が発見され得るのか大変気になるところです。

(G.T.)

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