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演奏&おはなし
田中正也と巡るプロコフィエフ ピアノ作品の世界Part2 開催レポート
〜ピアノソナタへの近道〜
講師:田中正也(ピアニスト)

第1回 2013年7月17日(水) 10:30〜12:30
ピアノソナタ第2番 Op.14 第3番 Op.28 古い手帳より

会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 昨年よりパウゼで開催されている人気連続レクチャーコンサート『田中正也と巡るプロコフィエフピアノ作品の世界』。Part2「ピアノソナタへの近道」第一日の今朝はピアノソナタの2番と3番が採り上げられました。スペシャリストの田中先生が「最もやりたかった」と語るこのシリーズ。有名な第7番(所謂「戦争ソナタ」)や第3番のみならず一般に採り上げられることの少ない作品も含めたソナタの全体像と「粋」に触れようと早朝から音楽関係者を中心として多くのファンが駆けつけました。

 とりわけ印象的だったのは、第2番の第3楽章についてのレクチャー。田中先生はこの楽章に関連してご自身のロシア留学時代の次のようなエピソードを紹介してくださいました。お話によれば、田中先生が当時この作品を音楽院で学ばれていた頃、人魚姫を題材にしたオペラ(※おそらくダルゴムイシスキーの『ルサルカ』)を観る機会があり、その一場面の情景がまさにこの楽章の楽想とぴったりと重なったそうです。その一場面とは、王子との身分の離れた恋に破れて身投げをした娘(この娘が「人魚姫」となる)の父親がドニエプル川を放心状態で放浪するというシーン。田中先生はこの楽章を通して弾いて下さいましたが、会場は一瞬にして物語の世界に包まれ、そのロシア的哀愁漂う深い抒情性にすっかり魅了されました。メカニカルな響きの印象が強いプロコフィエフですが、その奥にあるイマジネーションは極めて豊かであることがよく分かりました。

 解説は作品の各楽章の細部に渡り多角的に行われましたが、紙面の都合上、そのすべてをお伝えすることができないのが残念です。田中先生のように多面的なプロコフィエフの世界を立体的に把握することが至難の業であることは想像に難くありませんが、敢えて田中先生のお話の要点を纏めるなら以下のニ点となります。

1)古典的な形式と主旋律をベースにしながらそこに半音階的な副旋律を重ね合わせることで生まれる独特の立体感。譜読みをする際にもフレーズがどのように組み合わさり、どのように展開するのかを立体的に捉えることが作品理解の「ヒント」であり「コツ」である。

2)意外性やいかんなく発揮される遊び心を忘れないこと。プロコフィエフの場合、ソナタのような大規模な作品においても場面の切り替えや遊び心が構成上の重要な要素となっているので、単に理論的な観点からのみ理解しようとするべきではない。

 田中先生は最後に今回の締めくくりとして3番のソナタを通して弾いて下さいました。田中先生の演奏はいたずらに卓越したテクニックや響きの前衛性を強調するものではなく、極めて立体的でクリアーなタッチに支えられた豊かな詩情に溢れていました。他では絶対に聴けないプロコフィエフ。次回は9月27日。第4番と第5番が採り上げられます。どうぞお聴き逃しなく。

(G.T.)

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