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ピアニスト 中井正子 の ショパン講座 開催レポート
「バラード・即興曲 全8曲」
公開講座 & CD発売記念コンサート(全5 回シリーズ)
2013年5月10日(金) 〜11月29日(金)
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
第1回 2013 年 5 月10 日(金)10:30 〜 12:30  
♪即興曲 第1番 変イ長調 作品29、バラード 第1番 ト短調 作品23

 

 

 毎度ご好評をいただいている、ピアニスト中井正子先生の公開講座。本日より始まる新シリーズでは、全5回にわたって、ショパンのバラードと即興曲の全曲が取り上げられます。今回のシリーズは、特に演奏法や練習の仕方などの実践的な面に焦点をおいて進められる予定とのこと。プロの演奏家は日々何を考え、どのようにして演奏を構築されているのか、分かりやすい解説と美しい実演を通して、その秘訣の一端を明かしてくださいました。

 本日の曲目は、《即興曲第1番》と《バラード第1番》の2曲です。《即興曲》では、ジャンルの形式についての概論の後、各部分のメロディや伴奏の持って行き方や細かいニュアンスの付け方、ペダリングなど、実際の演奏に関わる事柄を、基本から丁寧に教えてくださいました。単にどう弾けばよいかだけではなく、なぜそのように弾かれるべきであるのかを、音型やハーモニーの動きから一つ一つご説明くださったので、受講生の皆様も一層理解を深められたのではないでしょうか。

 短い休憩をはさみ、後半の《バラード》でも密度の濃いお話が展開されました。筆者にとってとりわけ印象に残ったポイントの一つは、序奏の両手のユニゾンにおける響きのバランスの問題です。「よくある弾き方」の例として初めに示されたのは、右手の旋律を一貫してくっきり浮き立たせた演奏。確かにこういう演奏はよく耳にするなあ、と思いながら聞いていると、中井先生は「私ならこう弾きます」とおっしゃって、別の弾き方を提示してくださいました。やや平坦に響く最初のヴァージョンとはうってかわった立体感のある響きが生まれ、フロアからは思わず感嘆の声が。種明かしをしてくださったところによると、低音域で演奏している初めの部分では左手の音をよく響かせ、旋律の音域が上がっていくにつれて徐々に右手の方が浮き出てくるように、両手の音量のバランスを移行しているのだそうです。まさに職人芸ともいうべき緻密な響きの設計に感銘を受けるとともに、様々な表現の綾を通して時に作品のイメージをも一変させてしまう演奏の力を、改めて思い知ったような気がしました。

 このほかにも、演奏したり、生徒さんたちにレッスンを行ったりするときの助けになりそうな実践的なアドヴァイスが盛りだくさん。すべてをここでご紹介することは出来ませんが、演奏法を通じてショパンの作品そのものの魅力をも再発見することのできた、充実の2時間でした。

次回6月7日の講座では《即興曲第2番》と《バラード第2番》が取り上げられます。どうぞご期待ください。

(N. J.)

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