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カワイコンサート NO.2315
JJ ジュン・リ・ブイ ピアノリサイタル 開催レポート
2022年6月2日(木)開演18:30 開場18:00
会場:さいたま市民会館おおみや RaiBoC Hall大ホール(埼玉県)

 

カワイコンサート JJジュン・リ・ブイ リサイタルを聴いて

昨今のコロナ渦により、ますます先の見えない世界情勢となってまいりました。

感染者数が落ち着いてきたかと思えばまた新たな変異株が現れ、その度に世界中で様々な見解が発表されるという先の見えない繰り返し。そのことに疲れ、世間はみな諦めを感じてしまっているのではないでしょうか。

この様な中、昨年行われた「第18回ショパン国際ピアノ・コンクール2021」は、音楽ファンのみならず全世界においてかつてない盛り上がりを見せていました。コンテスタントの白熱した演奏は世界中にオンラインで同時配信され、人々は熱狂し、終了後もその熱は冷めやらぬ勢いです。それほどまでに人々は音楽を、感動を渇望していたのだと改めて思い知らされました。また、日本人ファイナリストが第2位、第4位に同時入賞するという快挙もあり、ますますピアノ熱が帯びる中、最年少参加者にして第6位入賞を果たしたJJジュン・リ・ブイさんは、1次からファイナルまでカワイフルコンサートピアノ《SK-EX》を使用いただいたことも大変話題となりました。

そのJJさんによるソロリサイタルをカワイコンサートで行われるとあり、内外からの期待の声も高く、私自身も大変楽しみにこの日を待ちわびていました。しかも会場は今年4月に移転オープンしたばかりのさいたま市民会館おおみや《RaiBoC Hall 大ホール》ということで、さらに期待値が高まっての開催となったことと思います。

ホールに一歩足を踏み入れると、木目調の内装が目に飛び込んできました。真新しい匂いに包まれ、気持ちの高ぶりを押さえつつ座席に座り改めて舞台に目を向けると、大編成のオーケストラも入るであろう舞台の中央にSK-EXが悠然と佇んでいました。開演を告げるカリヨンのような鐘の音は、これから始まる演奏へのプロローグに聴こえました。

やがて照明は消え満場の拍手とともに舞台上に現れたJJさんの姿はとても颯爽としており、また、人柄の良さをにじませた笑顔は一瞬で客席を虜にさせたのではないでしょうか。

ですがそんな印象も演奏が始まれば一変します。

音楽に魂を吹き込むかのような息づかいとともに始まったポロネーズはそれまでの会場の空気をガラリと変えました。深い心情を映し出すかのような音色、繊細な音遣いは聴く人の心をつかんで離さず、あっという間に客席のすべてを飲み込んでしまうような音楽に満ちていきました。続く幻想ポロネーズでは序章のアルペジオがまるで天から音が舞い降りてくるかのようで、またポロネーズの部分では時に悲しげな憂いを帯び、時に温かなまなざしをもって包み込んでくれる音色で、シゲルカワイの持つ個性も相まっているのだなと感じました。マズルカはショパンコンクールの再来を思わせる演奏で、よく調整の行き届いたピアノの音色が高い天井を伝って客席に降り注いでいる様子を体で感じました。まさに現地ワルシャワの会場にいるかのような空気感で、この空間を共有できていることに大変な喜びを感じると同時に恐れ多さも感じました。そして前半最後のバラード1番。テクニックの正確さやペダリングの細やかさもさることながら、情熱と葛藤、怒りが絡み合う感情を若々しいエネルギーで表現していることに大変心を掴まれました。そして曲中最大の難所であるPresto con fuocoの劇的なコーダを、いとも簡単に演奏してしまう技術力の素晴らしさにも大変感動しました。

前半のショパンプログラムは息をのむような演奏の連続で、本当にあっという間に終わってしまった感覚です。そして続く後半への期待は更に高まります。

後半始めのプログラムは、ドビュッシー12の練習曲より。決して有名曲とは言えない曲目ですが、演奏が始まると前半のショパンとは全く異なるタッチでの演奏で、これもまた驚愕の連続で聴き入ってしまいました。ドビュッシーらしい色彩感を表現されており、正確で細やかなパッセージの数々は、曲を知らない子どもたちも見入ってしまったのではないでしょうか。また、舞台上で演奏されているJJさんの姿も非常に楽しそうで、鍵盤の上をこれでもかと自由奔放に転げまわっているかのように感じました。とにかくショパンとドビュッシーの雰囲気、醸し出す空気感があまりにも異なっており、改めて演奏者の表現力の幅の広さ、深さを感じました。

そしてプログラム最後の組曲「火の鳥」。出だしのフォルテとその後の迫りくるリズム感、多彩なオーケストレーションは圧巻の一言でした。ストーリーが立体的に浮かんでくるような音空間、大胆さと繊細さが表裏一体となったタッチと表現、壮大な物語がまさに絵巻き物のように舞台上で繰り広げられている様は、本当に頭上を火の鳥が舞っているかのような錯覚に陥り、演奏後はこちらが身動きできないほどの感動に包まれました。若さ溢れる演奏はエネルギーに満ちており、まさに「不死鳥」でした。

会場からのアンコールにお応えいただき、演奏されたのはショパン3曲。あれほどの演奏の後、更にエネルギッシュな演奏をされた事に、ただただ敬服でした。客席もスタンディングオベーションと割れんばかりの拍手とで最大限の賛辞を贈っていました。

開演からの2時間は本当にあっという間に過ぎ、終演後は席を立つのも惜しいほどでした。大変貴重な体験をさせていただきました。

最後に、このような大変素晴らしい演奏会を企画しご尽力いただいた、カワイ音楽振興会の方々に感謝申し上げます。

地域指導講師 清水 織江

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