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カワイコンサート NO.2257
アレクサンデル. ガジェヴ ピアノリサイタル 開催レポート
2017年6月3日(土) 17:30開演(17:00開場)
会場:慶應義塾協生館藤原洋記念ホール(神奈川県)
河合楽器製作所創立90周年を記念して、アレクサンデル・ガジェヴピアノリサイタルが、6月3日慶應義塾協生館 藤原洋記念ホールにて開催されました。アレクサンデル・ガジェヴさんは、第9回浜松国際ピアノコンクールで、「優勝及び聴衆賞」を弱冠20歳で受賞されたピアニストで、今回のリサイタルを皮切りに、宮城、東京、愛知、福岡でコンサートを行います。開場前から多くの来場者が列をなすほど注目度が高く、会場は満席となりました。
この日は、前半がショパンの作品、「舟歌Op.60」「ポロネーズ第1番Op.26-1」「ソナタ第2番Op.35葬送」、後半はリストの作品、巡礼の年第2年「イタリア」より第4曲から第7曲、ペトラルカのソネット第47番、104番、123番、ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」と、重厚感のある充実したプログラムでした。
「舟歌」は、情感あふれる低音の響きが美しく、心地よいハーモニーに引き込まれ、クライマックスでは輝きを増して歌い上げられていました。続いて「ポロネーズ第1番」は、フレーズに多様な色彩のコントラストがあり、「p」の音の雫がポトリと落ちるような厳選された美しさに、魅了されました。
「ソナタ第2番」は、ショパンの不安や絶望と激しい感情を吐露した傑作と名高い曲です。一昨年の浜松国際コンクール2次予選でも演奏したそうですが、第1楽章は圧倒的な技術力による激情と夢想的な表現がなされ、第2楽章中間部では平穏で柔らかい響きの音色が大変際立っていました。また、第3楽章「葬送行進曲」は、悲痛な叫びや、やるせない感情に対して中間部の優美で抒情的な旋律の表現が対比され、とても印象深いものでした。
休憩後は、巡礼の年第2年イタリアより、ペトラルカの3つのソネット第47番、104番、123番が演奏され、響きを自在に扱った情感豊かな演奏に惹きつけられました。巡礼の年第2年イタリア最終曲、ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」がプログラム最後の曲でした。コンサートの最後に相応しく、緻密なテクニックに溺れることのないコントロールされた表現力と集中力に、完成度の高さを強く感じました。
アンコールではショパン作曲「マズルカイ短調Op.17-4」とリスト作曲「イゾルデの愛の死」(ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」より編曲)の2曲が演奏され、客席からの拍手がいつまでも鳴り止みませんでした。
全プログラムを通して、技術的な素晴らしさはもちろんのこと、音楽に対しての誠実さ、弱音の美しさが印象に残りました。また、ピアノとはこんなにも多彩な表現ができる楽器であるということに改めて気付かされたリサイタルとなりました。今後のガジェヴさんのご活躍を期待しております。
横浜ユニット音教指導担当 百瀬敦子
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