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カワイコンサート NO.2239
関本昌平 ピアノリサイタル 開催レポート
2016年5月15日(日) 開場13時30分 開演14時00分
会場:栗東芸術文化会館さきら中ホール(滋賀県)
澄み渡った空に時折立ち留まるほどに吹きつのる風が通り過ぎ、早くも初夏への気配を感じ始めた5月15日、関本 昌平さんのピアノリサイタルが栗東芸術文化会館さきら中ホールで開催されました。静寂に包まれた満員の客席がまず耳にしたのは、ベートーヴェン 6つのバガテルOp.126です。晩年の作品らしく、後期ソナタの持つロマン派のような響きと飾らない柔和で穏やかなフレーズ、しかしながら、ただそれだけではない神聖なイメージも加わっていて吸い寄せられるような演奏でした。ベートーヴェンにとって音楽はこういう存在だったのだと静かに語りかけられているようでした。
そしてプロコフイエフ ピアノソナタ第7番 Op.83 有名な戦争ソナタです。
乾いた和音が独特の響きとリズムを織りなし、なおかつ音そのものがダイレクトに耳に飛んでくる第一楽章。冒頭の美しさも含みを持ちつつ不安にさせる鐘の音やバスの響きに虚無感を触発する第二楽章。そして、ほぼ息つく間もなく始まる第三楽章は一定のテンポに誘われてどんどん感情の爆発、奔流となって流れ出る思いがホール内を突きあがるようでした。ベートーヴェンの後にこのプロコフイエフが演奏されたことに関係性と意味合いを感じずにはいられませんでした。
続いて後半はショパンのプログラムでした。英雄ポロネーズに始まり、ワルツOp.64-1,Op.64-2,ノクターン第8番、最後はスケルツォ2番と演奏されました。
ショパンの演奏になると前半とはまた音色が変わり、ふわりと一度旋律が浮遊するような感覚と幾重にも感じられる響きが心地よく、その呼吸がもたらす間は余韻を味わうための空間として揺蕩うのではなく次への誘いとして存在しているようでした。
特に、ノクターンはそれを肌で感じるには溢れるほどで、生演奏の醍醐味を味わう1曲だったのではないでしょうか。
鳴りやまない拍手の中で演奏されたアンコール曲は、ショパンの「雨だれ」とブラームスOp.118-1でした。ブラームスは『1番か2番かどちらにしましょう。…短いから1番で…』と決められて笑いが零れたのですが、機会があればぜひ2番もお聴きしたいと感じずにはいられませんでした。関本さんの奏でるあのインテルメッツォ2番もまた相当魅力的であろうと想像されます。
こうしてコンサートは多彩な音色と甘美な響きを残して幕を閉じました。ピアノで紡がれる表現力の真髄を垣間見る事が出来た感慨深い一日となりました。
滋賀事務所 岡本 渚
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