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カワイコンサート NO.2207
今川裕代ピアノリサイタル 開催レポート
2014年5月29日(木) 開場18時00分 開演18時30分
会場:川口総合文化センター リリア 音楽ホール(埼玉県)
緑眩しい初夏の季節のもと、清々しい天候に恵まれた日の開催となりました。開演前のお待ちの列にはお子様連れのご家族や、中・高校生もみかけられました。本ベルの後、舞台上に照明が広がると、コーラルピンクのドレスを纏ったソリスト 今川裕代さんが登場、黒いピアノに花が添えられたような雰囲気に包まれました。演奏に入る前にご挨拶と演奏される・シューベルトの曲についてのお話しから始まりました。・・・悲しみや内向的な部分と溌剌とした曲調からは大人が忘れかけている純粋な心が思い出され、感情が浄化される美しいメロディーをご堪能いただきたい・・と語られた後、そっと心を寄せるように、”アレグレット ハ短調D915"がはじまりました。移住する友人との別れの思いを込めた曲で、入り混じる陰影を一つ一つ音にしながらまた短調と長調の次から次へと変わる和音に慈しみを込めて届けているようでした。そして、扉がすっと開かれ光が差し込むように次の”即興曲作品90-3”がはじまりました。低音のメロディーラインは心動かされる予感を帯びて、音に同化するように時折見せる奏者の優しい表情が安心感を与えてくれました。
”3つのピアノ曲D946”は小気味よい、緩急のついたリズムが躍動的で、中間部の和音の拡がりと高速に転がるメロディーが過ぎ去った後、穏やかなテーマの中に、美しく揺れ動く部分が交差していました。そして高速な伴奏を支配するような3度のハーモニーが落ち着きをとりもどさせてくれたかと思うと第3曲ではシンコぺーションの変化が徐々に音の屈折の様に散りばめられていき、結尾は一気に音の光を集めた煌びやかさでした。
モーツァルト自身[初心者のための小ピアノソナタ]と記しているK545は、円熟期らしい清澄な響きの曲で、親しみをこめた、子供に語り掛けるような音色で奏でられ、軽妙なテンポに彩られた”小さなジーグK.574”で前半が締めくくられました。後半は、アラベスク模様の淡いグレーベージュのシックな装いに変わり、ショパンの中でも親しみ深い曲が集められました。ホールにすっきりとした響きで奏でられた”軍隊ポロネーズ”は明るく、前向きになるような瑞々しい音が躍ったかと思うと、3拍子のポーランドの民族舞踊”マズルカ 作品17-4”は夜の翳が覆うヨーロッパの石畳を自在にステップするような哀愁に包まれました。
さらに有名な”別れの曲””エオリアン・ハープ””ノクターン 作品9-2”は、ピアノの詩人として叙情あふれるメロディーが天空から降り注ぐ光のような優しさに終始満たされていました。
一礼ののち、最後の”バラード第1番”が語り出すように始まりました。やがて朗々と流れる河のほとりに佇み聴こえる音色は、大河のようなスケールとなって溢れる音が物語を印象付けてプログラムを終えました。
アンコールの山田耕筰の”からたちの花”はヴァリエーションに富んで、最後までお客様を楽しませてくれました。そして2曲目のエルガー”愛のあいさつ”を聴いて、きっと初夏の雰囲気を呼び起こされ、爽やかな音に包まれながら、お客様は家路につかれたことでしょう。
カワイ音楽教室 埼玉事務所 地域指導講師 小林好美
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