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カワイコンサート NO.2188
関本昌平ピアノリサイタル 開催レポート
2013年5月23日(木) 19:00開演
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(東京)
照明が落ち、舞台袖から演奏者の靴音が微かに響いてくる。客席は徐々に期待に満ちた緊張感に包まれました。ショパン:舟歌 嬰へ長調 作品60から公演が始まりました。音が淀みなく澄んだ水の上を迷いなく進んでいくよう、希望に満ちた溌剌とした演奏に引き込まれていきました。
次に、ブラームス:4つの小品 作品119。この作品はブラームスのピアノ曲で最後に出版されたもの。性格的・内面的な作品であり、1.間奏曲 ロ短調 クララ・シューマンが「灰色の真珠のよう」と言ったこの曲の「憂鬱さ」と不協和音がもたらす「官能的な悦び」を見事に表現した演奏。関本さんが「弾いた後ほかの音を聴きたくない、沈み込むような曲」と言うように、最後の一音が深淵に落ちていくのを見届けるように耳を澄ませていた姿が印象的である事を関本さんは客席に向かい、語りがありました。
以後の3曲も丁寧でわかりやすい解説と、鍵盤に向かった途端、身体あるいは心に滲みついたものが湧き出るような演奏で、ブラームスとその作曲に対する関本さんの思いの深さが伝わってきました。
ショパン:ポロネーズ 変イ長調 作品53《英雄》は、関本さんの真骨頂。まったく雑味のない爽快感にあふれた演奏に魅了され、高揚した気分で休憩をむかえ、後半の曲目について演奏のみならず、解説も楽しみにしている声があちらこちらで聞かれました。
後半はJ.S.バッハ:トッカータハ短調 BWV911から。300年前の古さを感じないと話す関本さんの演奏は、この曲の持つドラマ性を心から楽しんでいるように思えました。
ベートーヴェン:ソナタ28番 イ長調 作品101は名曲中の名曲と断言し、心地よく響く力強い音、思慮深く優しい音、様々な音色をから、深い愛情を持って演奏していることが伝わってきました。
アンコールではショパン:ワルツ 変二長調 作品64−1《小犬のワルツ》、ブラームス:6つの小品 作品118 より 第2番 間奏曲 イ長調の2曲が演奏され、笑顔でピアノに向かい両手を広げるしぐさ、演奏後ピアノの蓋をしめる姿がとてもチャーミングで、この演奏会で築いたピアニストとピアノの濃密な関係を物語っていました。ピアノの音、そして音の鳴っていないない無音の音を聴き、情熱と愛情を持って演奏する姿に心を打たれた、清々しい5月の夜でした。
城南事務所 内田 由美子
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