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ニューアーティスト・アフタヌーンコンサート2021
Vol.3 出演:伊藤 順一・齊藤 一也 開催レポート
2021年3月18日(木) 14:00〜15:20(13:20開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
若手ピアニストによる全6回の「ニューアーティスト・アフタヌーンコンサート」第3回は、伊藤順一さん、齊藤一也さんのご登場です。客席は間隔を空けて用意されているものの、1席も残すことなく埋まった様子は壮観でお二人の人気ぶりが窺えます。本日はお二方とも全てショパンの作品を選ばれましたが、各々の個性を通して奏されることで、ショパンの作品、ひいては内面に宿る多様な側面が浮き彫りにされるようでした。
伊藤さんの演奏は気品に満ちた音選びによって、相対して激情もまた効果的に感じられました。《バラード》第2番では、静寂の中に浮かび上がる繊細な音の運びと余韻の聞かせ方が際立ちます。同様に穏やかな雰囲気の《ノクターン》 作品37-2では、転調による微妙な色彩が表現されます。一度拍手を受けてからの《エチュード》作品10-8、作品25-5は、ルバートや間の取り方をいっそう自由に捉え、練習曲の枠を超えた魅力を引き出されていました。《スケルツォ》第4番では、軽やかな指運びがショパン的な悠々とした優美さを顕にし、終始お客さまの「これが聞きたかった」という期待に応えるような華やかなパフォーマンスを披露してくださいました。
齊藤さんのプログラムは中心に《幻想曲》へ短調が置かれており、全体に短調の作品を基調としていることが窺えます。調性にかかわらず、演奏からは各々の作品に宿る「哀」の表現が印象的に聞こえました。《ノクターン》作品55-2では対旋律が様々な情緒を綾なし、平行調で終止音のG音を引き継いで《4つのマズルカ》作品30が続けられます。満を持しての幻想曲は、ドラマティックさとシリアスさの絶妙なコントロールを持ってして、内省がお客様に共鳴している様子が感じられました。終曲には幻想曲のドラマの余韻を残すように、イ短調のエチュード2曲、作品25-4、作品25-11で幕が引かれました。
暖かい春の陽気の午後、「ニューアーティスト」シリーズでは、まさに意気盛んな若手奏者の皆様の輝かしい演奏をお楽しみいただけます。
(M.S.)
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