東京藝術大学ランチタイムコンサート2020-2021

東京藝術大学ランチタイムコンサート2020-2021
＜音楽学部1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.6＞
出演：鳴谷茉佑子 & 西坂望 & 速水理彩開催レポート
2021年2月25日(木) 12:00～13:10（11:20開場）
会場：カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」

　本日は東京藝術大学音楽学部1年生によるランチタイムコンサートシリーズの一環で、鳴谷茉佑子さん、西坂望さん、速水理彩さんのお三方が、素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。特に今年度大学に入学された方々はコロナ禍によって、勉学の機会を大幅に制限されてしまいましたが、このシリーズに出演されている皆様はそのような制約をものともせず、各々の努力の成果を発揮されています。

　本日トップバッターで登場された鳴谷茉佑子さんは、ラヴェルの最難曲の1つと言われている《夜のガスパール》より〈オンディーヌ〉と〈スカルボ〉を演奏されました。鳴谷さんの演奏は安定した技術と気品に溢れた音色が印象的でした。〈オンディーヌ〉は「水の精」というタイトルの意味にふさわしい非情に繊細な演奏で、〈スカルボ〉は技術的な難所を感じさせない軽やかさと神秘性のある演奏で、客席の皆様もその研ぎ澄まされた音楽に惹き込まれていました。

　次に登場された西坂望さんは、粋なリズムと独特のハーモニーが際立つプロコフィエフのピアノ・ソナタ第2番を演奏されました。西坂さんの演奏は、音量・音質とも非常にコントラストの効いたもので、プロコフィエフの切れ味のある音楽を見事に表現されていました。特にスリリングな音運びが特徴的な終楽章では、会場も心地よい緊張感に包まれており、演奏の後には大きな拍手があがりました。

　最後に演奏された速水理彩さんは、色とりどりの音の重なりが特徴的な、スクリャービンの楽曲を集めたプログラムでした。先に演奏された《24の前奏曲》第1番と第2番は、ショパンを彷彿とさせるような洒落た雰囲気が特徴的ですが、速水さんは持ち前の華やかな音色で、これらの楽曲の性格を表現されていました。そして、スクリャービンの作品の中でもピアノ独奏ならではの技巧に溢れたピアノ・ソナタ第2番では、複雑に絡み合う音の線の1つ1つを、美しく磨き上げていました。特に終楽章にあたる第2楽章では、急速な音運びの中に立ち現れる旋律線を見事に際立たせており、会場全体が息を呑む様子でした。

　このランチタイムコンサートシリーズは今年度いっぱい続きます。3月も若い才能に溢れた演奏に出会えることを、楽しみにしております。

（A.T.）