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東京藝術大学ランチタイムコンサート2020-2021
<音楽学部1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.1>
出演:荒川 浩毅 & 今井 理子 & 宇佐美 香乃 開催レポート
2020年12月22日(火) 12:00〜13:10(11:20開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 本日より、東京藝術大学音楽学部1年生による、ジョイントリサイタルのシリーズが始まりました。学部1年生とは言え、出演される若いピアニストの皆様は、既に国際的な舞台で次々と活動を広げています。感染症の脅威がなかなか軽減されない中、完全予約制での開催となりましたが、たくさんの音楽を愛好する方々にお集まりいただき、完売で演奏会の幕を開けることができました。

 荒川浩殻さんが演奏されたのは、気品漂う音の響きが印象深いバッハの《イギリス組曲》第3番と、かの有名なシューベルトの歌曲をリストがピアノ独奏に編曲した《鱒》でした。荒川さんの演奏は、常にピアノという楽器と丁寧に向き合っていることが伝わってくるような、滑らかで優しい音運びが特徴的で、今回のプログラムにとても合っていました。《イギリス組曲》はバッハが突き詰めてきた精巧なフーガ技法と、バロック末期に流入し始めた明快なギャラント様式の両方がうかがえる作品ですが、荒川さんは軽やかながらも堅固な足取りで音1つ1つを奏でていらっしゃいました。一方の《鱒》は、リストが付け加えた装飾の艶やかさを存分に引き出したうえで、主題である歌曲《鱒》の旋律を、美しく際立たせていらっしゃいました。

 一方の今井理子さんは、全てショパン作曲のプログラム。本日はショパンの諸作品の中でも重厚な音の層が特徴的な《ポロネーズ》から第5番と、華麗な装飾がきらびやかな《舟歌》を選んでいらっしゃいました。今井理子さんの演奏は、力強さ、優しさ、華やかさ、繊細さといったあらゆる表現を、絶妙なバランスで采配したものでした。ロマンティックな曲調の多いプログラムにおいても、決して過度に情緒を出すことなく、端正に音の流れを進めてゆく様が、とても心地よく感じられました。先に演奏されたポロネーズでは、この楽曲の厚い音の重なりを活かして、ショパンの音楽の持つ強さと哀しさの両方を表していらっしゃいました。《舟歌》では、華やさの中にも筋の通った音楽創りが光りました。

 最後に演奏された宇佐美香乃さんは、ブラームスの壮大な《ピアノ・ソナタ》第3番から、第1, 3, 4, 5楽章の演奏でした。宇佐美さんの演奏は、1つ1つの音に意志を感じるような力強さが、大変印象的でした。この《ピアノ・ソナタ》は前述の通り5楽章まであるブラームスの労作で、本日のプログラム時間では全楽章演奏しきれないほどの大きな作品ですが、宇佐美さんの音が持つエネルギーは決して最後の最後まで衰えることがなく、聴く人を音楽の世界へと惹き込んでいらっしゃいました。緊迫した冒頭と華やかなラストを飾る第1楽章と第5楽章はさることながら、第3楽章での軽やかながらも力強い音響、第4楽章の静かな緊張感も印象深く、この作品を見事にまとめていらっしゃいました。

 このシリーズは今年度末まで全9回にわたって開催されます。今日のお三方に続き、音楽界のこれからを担うピアニスト達の熱演が、楽しみな限りです。

(A. T.)

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