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東京藝術大学ランチタイムコンサート2020
<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.7>
出演:秋山 紗穂 & 尾城 杏奈 開催レポート
2020年11月24日(火) 12:00〜13:30(11:20開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 東京藝術大学修士1年生によるシリーズ全7回の最終回となりました。

 

 一人目の秋山紗穂さんは、音楽そのものの性質に誠実な態度で演奏に臨まれていました。《平均律クラヴィーア曲集》第1巻より第22番 変ロ短調は、音の動きを味方につけた曲想の表現が耳に心地よく聞こえました。音型の反復が表す「宿命と悲哀」、テノールが「別れを告げる」とプログラムに記される通り、音楽を主語にして曲想を情感として表現されているところにも、秋山さんの音楽に対する姿勢が表れているようです。続いて、リスト「伝説」より〈波を渡るパオラの聖フランチェスコ〉では、鍵盤を熟れた扱いで使いこなし、ピアノの表現力を十分に生かしていました。終曲は、ベートーヴェンの「熱情」ソナタです。音楽史の一過渡期を担った大作は、ソナタという枠に収まり切らない表現への渇望に満ちています。変革の意志や刹那的な衝動が綯い交ぜとなったダイナミックな音楽を演奏する恐怖に、果敢に向き合われる様子が会場を魅了していました。

 

 二人目の尾城杏奈さんは、大きな音楽の構造を捉えた推進力のある演奏が印象的でした。一曲目の≪平均律クラヴィーア曲集≫第1巻より第8番 変ホ短調は、音楽構造の秩序に則ることで自ずと浮かび上がる均整美が発揮されていました。フーガでは、声部を扱う様々な手法が次々と連ねられていくことで規模が拡大していきます。度重なるストレッタによって次第に高まる緊張感とともに展開していく様子に、音楽の構造が目に浮かぶようでした。二曲目には、シューベルトの最晩年のピアノソナタ第19番 ハ短調を取り上げられました。プログラムでは作品の上でのベートーヴェンの影響に触れながらも、シューベルトという作曲家の固有性について焦点を当てています。「歌謡性」についての記述があるように、伴奏音型の周期の中に、歌唱旋律とも聞こえる旋律の断片が美しく浮かび上がり、歌曲や室内楽曲を含む、ピアノ曲に留まらない作曲家全体への深い理解を感じさせられました。

(M.S.)

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