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桐朋学園 ランチタイムコンサート2020-2021 in 表参道
開催レポート
<音楽部門在籍生によるピアノジョイントリサイタル Vol.3 > 
出演:今井 茜 & 今井 梨緒 & 谷口 知聡
2020年10月28日(水) 12:00〜13:10(11:20開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
 

 3回目を迎える桐朋学園音楽部門在籍生によるピアノジョイントリサイタル。本日は今井茜さん、今井梨緒さん、谷口知聡がそれぞれ渾身の演奏を聞かせてくれました。

 最初に舞台に上がった今井茜さんはリストの《バラード第2番》を演奏されました。畢生の大作であるピアノ・ソナタ ロ短調と同時期に作曲された大規模作品です。嵐にうねる大海のダイナミックな表現から繊細で美しい愛の歌に至るまで、幅広い表現の引き出しが求められますが、それと同時にリスト一流のヴィルトゥオジティ、大規模作品ならではのドラマツルギーを発揮することも欠かせません。今井さんはこれらの要求を見事に満たし、伸びやかで澄んだ音色をホールに響かせていました。パッセージワークや分厚い和音連打などに代表される各所の技巧は言うまでもなく、楽曲の部分部分のバランスにも優れた感覚が聴き取れました。

 続けて演奏されたのは今井梨緒さん。シューマンの《交響的練習曲》は、主題と変奏による壮大な演奏会用練習曲です。それぞれの変奏が多彩な表情をもっている本曲ですが、ときに流れるような旋律線が際立ち、ときに熱烈な情熱が全面に押し出され、ときに悲痛さが胸に深く染み入るような、素晴らしい演奏でした。また、変奏どうしのはっとさせられる表情の変化が十全に引き出されていたことも特筆すべきでしょう。白眉は最終変奏で、祝祭的な華々しいムードをたたえた一曲ですが、そのムードに押されて音楽の均整さが失われることはありませんでした。

 最後に演奏されたのは谷口知聡さん。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番第1楽章の冒頭の不協和音がホールを緊迫した空気でつつみ、演奏に一気に引き込んでいました。楽曲の表情は、谷口さん自身が「恐ろしさ」と表現されたように、なにか逃れがたいものを畏れるような不穏さが全面に押し出されたもので、非常に効果的に聞こえました。続く権代敦彦《耀く灰》は、2008年に作曲された現代作品。高音の細かな音の粒の明滅を主軸とする作品で、ペダリングとピアノとホールと、なによりもタッチの正確さによって生み出された残響が、鮮烈な印象を引き起こしました。クライマックスで現れる低音域の強烈さ、また倍音列に則っていると思われる音列の出現は非常に効果的に響きました。楽曲解釈や演奏の難易度の高さが一聴しただけでも窺えましたが、谷口さんは最後まで集中を切らすことがなく、見事に奏で上げられました。列席された作曲者の権代さんも拍手を送る快演でした。

 

 超絶技巧の大曲がならんだ聴き応えのあるプログラムで、それぞれのピアニストの腕前が遺憾なく発揮されていたといえるでしょう。本演奏会で見せてくれたお三方の確かな技巧と表現力から、今後どんな音楽が生まれてくるのでしょうか、今後のご活躍が楽しみでなりません。

(A.Y.)

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