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ニュー・アーティスト ランチタイムコンサート2020 in 表参道
岩井 亜咲 & 五十嵐 薫子 ピアノ・ジョイントリサイタル
開催レポート
2020年8月28日(金) 12:00開演(11:20開場) 13:30終演予定
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
使用ピアノ:カワイフルコンサートピアノ SK-EX
本日はニューアーティスト・ランチタイムコンサートの一環として、若手ピアニストの岩井亜咲さんと五十嵐薫子さんによるジョイントリサイタルが催されました。会場は引き続きお客様同士の間隔を空けての設営となっておりますが、それでも聴きにいらした方々の美しい音楽に耳を傾けたいという熱意は伝わってきました。本日のプログラムはお2人とも、前期ロマン主義の作曲家に焦点を当てたものでした。19世紀前半は構造的な大作から詩的な小品に至るまで、現在メジャーとなっているピアノ曲が次々と輩出された時代で、ピアニストにとっては看過できないものです。本日のお2人のプログラムもまた、前期ロマン主義の小作品と大作品を組み合わせる形となっており、ピアノ音楽史の重要な1頁を開いているような感覚でした。
最初に登場された岩井亜咲さんは、メンデルスゾーンの繊細な音楽的感覚が際立つ《無言歌集》から5曲と、ショパンのワルツ、マズルカ、バラードを組み合わせたプログラムでした。ピアニストにとってはお馴染みであるものの、なかなか演奏会でまとめて聴く機会のない《無言歌集》ですが、岩井さんは各々の楽曲に特徴的な音型やハーモニーを的確に再現し、改めてこれらの楽曲のシンプルな美しさを引き出してくださいました。対してショパンの《ワルツ集》からは装飾音の煌びやかな第5番を選び、ピアノ音楽の華々しい面を見せてくださいました。《マズルカ》作品59を繊細にまとめた後には、ショパンのピアノ曲中でも大曲である《バラード》第4番を演奏されました。ヘ短調の哀愁漂う音色が変奏されながら大きなコーダへと繋がる楽曲ですが、岩井さんは1つ1つの場面をそこに合った音色で演奏し、技巧的なコーダも美しく歌い上げていらっしゃいました。
後半に登場された五十嵐薫子さんは、華やかな音色と抜群の安定感が特徴的で、オール・ショパン・プログラムを最後まで艶やかにまとめていらっしゃいました。冒頭では《エチュード集》から情熱的な作品10-4とより内向的な作品25-6を選び、五十嵐さんの高い技術と表情の豊かさを見せてくださいました。その後には嬰ハ短調の《ノクターン》でショパン作品のより哀愁的な側面を見せてくださり、続いてショパン作品の中でも様々なピアノの表情がうかがえる《スケルツォ》第2番を、迫力と優雅さを兼ね備えて演奏くださいました。《マズルカ》作品33で再びショパンのやや内向的な面を見せてくださった後、最後のプログラムには《スケルツォ》第3番を演奏されました。雄々しいオクターブの連続と繊細な高音域の音型の対比が美しい楽曲で、最後には非常に情熱的なコーダがつけられた楽曲ですが、五十嵐さんは持ち前の安定した技術と表情の豊かさで、この楽曲の美しさを存分に引き出していました。
お2人の素晴らしい演奏に会場からは大きな拍手が送られました。感染症への懸念が続く中にも、美しい音楽の力を感じる、大切なひと時でした。
(A. T.)
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