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【6月4日振替公演】
佐々木 崇 シューマンリサイタル(全12回)開催レポート
〜Vol.5 ロマン的フモールの世界〜
2020年12月2日(水) 19:00開演 18:00開場
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

  

 東京藝術大学を経て、同大大学院博士課程でシューマンを研究し、博士論文でシューマンを深く解析したピアニストの佐々木 崇さんが、得意のシューマンの主要なピアノ曲と室内楽曲全てを6年全12回にわたって取り上げるという「佐々木 崇シューマンリサイタル」を進行中です。1シリーズに4回ずつのリサイタルで全3シリーズが行われ、その《シリーズ2》(2020〜22年)が始まりました。その第1回目(通算第5回目)が、ピアノ曲ばかりを集めて「ロマン的フモールの世界」と題して行われました。

 まず最初は、8曲からなる「ノヴェレッテン 作品21」から『第1曲 くっきりと力強く』と『第2曲 このうえなく急いで華々しく』の2曲を演奏しました。第1曲では力強さと柔らかさとの対比が鮮やかで、第2曲では速いテンポの箇所とゆったりしたテンポの箇所との対比が見事で、流れるような演奏でした。

 次は「フモレスケ 作品20」という大曲です。離れたところにいるクララのことを思いながら作曲をし、文章を書き、泣いたり笑ったりという喜怒哀楽がこの曲の中に描かれているということですが、当時のシューマンの様々な心情が現れているかのように曲想が頻繁に変わります。それを見事に淀みなく表現して引き込まれました。

 後半最初の曲は「プレスト・パッショナート」。この曲は本来ピアノ・ソナタ第2番 作品22の終楽章(初稿)として作曲されたものですが、クララの提案で破棄され、シューマンの死後にブラームスによって出版されたそうです。クララによれば、専門家にも愛好家にも難し過ぎるということだったそうですが、佐々木さんは聴き手に難しさを感じさせず、流麗に演奏してシューマンの魅力の一端を感じさせてくれました。

 次は「色とりどりの小品〈14のピアノ小品集〉作品99」より12曲が演奏されました。この曲集は、シューマンが若い頃から書き溜めて使われなかった小品から14曲を集めて、晩年に出版したものです。演奏されたのは、『前奏曲』、『3つの小曲』、『アルバムのページ』(5曲)、『夕べの音楽』、『スケルツォ』、『速い行進曲』です。曲ごとに雰囲気を変えるのがとても上手く、『アルバムのページ』では5曲中ゆっくりしたテンポの曲が4曲ですが、表情がそれぞれ違っていて、聴いていて飽きさせません。『スケルツォ』では快活そうな感じの中に、どこかシューマンらしい陰を感じさせます。

 最後の曲は「3つの幻想小曲集 作品111」です。3曲は途切れなく演奏されますが、第1曲では流れるように、第2曲では哀愁を帯び、第3曲は力強さと静かなところとの対比が非常に面白く、間の取り方も実に上手い演奏でした。

 アンコールにはやはりシューマンの「アラベスク 作品18」と「トロイメライ」という名曲2曲をしっとりと演奏して幕を閉じました。シューマンの魅力を存分に味わえたひと時でした。

(K.Y.)

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