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日本ショパン協会 第290回例会
多賀谷 祐輔 ピアノリサイタル 開催レポート
《日本ショパン協会パウゼシリーズ Vol.42》
2020年2月15日(土)開演18:30 (開場18:00)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 日本ショパン協会が主催するコンサートシリーズにおいて、多賀谷祐輔さんのリサイタルが行われました。多賀谷さんは母校である東京藝術大学で指導にあたられているほか、ソロに留まらず、室内楽、コンテンポラリーダンスのパフォーマンスに即興演奏で参加するなど、幅広く活動されています。

 まずは、哀調で包まれたシューベルト《4つの即興曲D899》より第1曲。調性を変えてテーマが繰り返されるなか、異なる雰囲気を充分に引き出していきます。デリケートで包容力のある演奏が印象的です。

 2曲目は、シューマン《クライスレリアーナ》。描かれた複雑な情緒とその極限が、目まぐるしく変わる曲想から感じ取ることができます。理性が主観的、客観的に整理され、本質的な部分がつかみ出された演奏です。

 後半は全曲ショパン作品による構成。〈バラード第3番〉《2つのノクターンOp.27》〈即興曲第3番〉〈幻想ポロネーズ〉の4曲が披露されました。作曲家の人生におけるできごとや、強い思いのなかから生まれたそれぞれの作品は、心に寄り添いながらも知的に汲み取られています。どの演奏を取っても、情感に訴えるものでした。

 アンコールは、お話を挟みながら3曲披露。ショパン《3つの新しいエチュード》より第2番、〈ノクターン第20番(遺作)〉、「運動会を思わせるリスト編よりも好み」と紹介したシューマンの〈献呈〉はクララの手による編曲版でした。

「芸術などと大それた言葉を使わなくとも、日常のさりげないやり取りのなかで、他者との共鳴が生まれた瞬間はとてもうれしい」と、プログラムノートに寄せた多賀谷さん。深く捉えられた音楽は、観客に多様な感情をもたらす演奏でした。

(R.K.)

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