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尼子 裕貴 ピアノリサイタル 開催レポート
《2018年 日本音楽コンクール 入賞者シリーズ》
2020年1月22日(水) 開場18:00 開演18:30
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
2018年度日本音楽コンクールで第3位・岩谷賞(聴衆賞)を獲得し、令和の音楽界での躍進が期待されるピアニスト尼子裕貴さんによるリサイタルが行われました。まずは、憂いを帯びた音色でモーツァルト《ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K.V. 310》が演奏されました。特に第2楽章では、ペダルに頼るのではなく演奏者の指使いによって音と音が繋ぎ合わされ、また丁寧なスタッカートは雨がしめやかに降っているような落ち着いた雰囲気を作り出し、内省的な音楽が紡がれました。ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110》は難聴を患っていた頃のベートーヴェンの頭の中を映し出しているかのような演奏で、苦悩の中でも美しさを希求する儚くも謹直な音楽に対する作曲家の思いが丹念に描かれました。また、最終楽章のフーガは立派で大きな門が重々しく開かれるような壮大雄渾な演奏でした。
後半はオール・リストのプログラムで、まずは《メフィスト・ワルツ 第1番(村の居酒屋での踊り) S514/R181》を弾力に富むタッチとともに人知を超えた技巧で聴衆を魅了しました。《2つの演奏会用練習曲 S145/R6》の第1曲「森のざわめき」では葉が擦れた隙間からきらめく光のような音色に、第2曲「小人の踊り」では想像力を掻き立てる不思議で幻想的な表現に包まれました。最後に演奏された《巡礼の年 第2年「イタリア」S161/R10bより 第7曲 ダンテを読んで ― ソナタ風幻想曲》では、技巧だけでなくドラマチックな輝きを持った演奏に圧倒されました。研ぎ澄まされた演奏者の集中力は音楽に凛々しさを与え、尼子さんの魅力とピアノの持つ最大限の可能性が融合した素晴らしい音世界が創出されました。
アンコールにはショパン《24の前奏曲 Op. 28より 第21番 変ロ長調》が愛溢れる音色で、リスト《超絶技巧練習曲集より 第4曲「マゼッパ」》が華々しく演奏され、リサイタルの幕は閉じられました。
(M.S)
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