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染谷 美結 & 坂井 彩香 ピアノジョイントリサイタル開催レポート
《 くにたちサロンコンサートin表参道シリーズ Vol.28 》
2019年12月25日(水)19:00開演 18:30開場
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 くにたちサロンコンサート in 表参道シリーズ Vol.28は、国立音楽大学大学院修士課程2年の染谷美結(そめやみゆ)さんと坂井彩香(さやか)さんのお二人の登場です。

 前半は染谷美結さん、プログラムはシューマンを2曲。まず、「3つの幻想小曲集Op.111」です。第1曲は4/4拍子ですが、非常に速く(Sehr rasch)と指定があり、最初から最後まで8分音符が上声部、中声部で常に激しいテンポで動きますが、染谷さんはとても滑らかに、かつ指定(mit leidenschaftlichem Vortrag=情熱的な演奏で)に従って情熱的に弾きました。attaccaの指示ですぐに第2曲に入りますが、第1曲とは対照的に非常に穏やかな曲で、切り替えがとても上手くいっていました。第3曲は力強くはっきりとした曲ですが、染谷さんは性格の違う3曲をとても上手く弾き分けていました。

 続いて3楽章形式の「幻想曲 ハ長調 Op.17」です。この曲はリストが提唱した「ベートーヴェン記念像」の建立計画に賛同したシューマンが、そのための寄付を集めるために作曲したもので、ベートーヴェンを讃えるために、第1楽章の終わりにベートーヴェンの連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」の一部が引用されています。第2楽章では第1主題に勇壮な行進曲が現れるなど、シューマンの傑作中の傑作と言えるでしょう。演奏頻度も非常に多いこの曲を、染谷さんは各楽章の特徴をよく捉え、シューマンの面白さを引き出していました。

 休憩を挟んで後半は坂井彩香さん。プログラムは、プロコフィエフです。まず20の小品からなる「束の間の幻影 Op.22」から15曲を選んで演奏しました。1曲ずつは非常に短い曲ですが、それぞれに特徴があります。プロコフィエフらしい怜悧さがあり、鋭さもありますが、なかなか変化に富んでいて面白く、全体を通して決然とした演奏に感じました。

 次は「ピアノソナタ 第6番 イ長調 Op.82」です。このソナタは、第7番、第8番と共に「戦争ソナタ」と呼ばれる、プロコフィエフの代表的な作品の一つです。第1楽章では、戦争を思わせるモティーフを決然とした演奏で際立たせます。第2楽章は一転して軽やかなリズムになりますが、その切り替えがとても上手くいっていました。第3楽章はプロコフィエフ後期の特徴と言える抒情的なメロディーの緩徐楽章ですが、第1楽章での戦争を忘れさせるような演奏でした。第4楽章では、リズミカルに動き回る細かい音の動きを巧みに表現し、対象的なメロディーとの変化も上手く表現していました。各楽章の特徴をよく掴んでとても面白い演奏でした。

 最後は染谷さんと坂井さんお二人による4手連弾で、チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」から『行進曲』と『トレパーク』を演奏しました。「くるみ割り人形」はクリスマスの頃によく上演されますが、この日はちょうどクリスマス当日。コンサートの最後を締め括るには最適な曲目と言えるでしょう。Tを染谷さん、Uを坂井さんが担当しました。それぞれのソロが終わった後なので、お二人も聴衆も緊張感が和らいで、とても明るく、楽し気に演奏してコンサートは終了しました。

(K.Y.)

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