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尾 真菜 & 高梨 愛未 & 竹内 麻美 ランチタイムコンサート
開催レポート
東京藝術大学 ランチタイムコンサート2019・2020 in 表参道
<音楽学部1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.5>
2019年12月25日(水) 11:30開場 12:00開演(13:00頃終演予定)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
暮れも押し詰まったクリスマスの当日に行われた東京藝術大学ランチタイムコンサート、音楽学部1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.5は、高尾真菜さん、高梨愛未さん、竹内麻美さんの3名が出演しました。トップ・バッターは高尾真菜さん。高尾さんは愛知県出身。名古屋市立菊里高校音楽科を経て東京藝大に入学しました。ショパンが大好きだという高尾さんは、そのショパンからまず「2つのノクターンOp.55」を演奏しました。1曲目の「ヘ短調」では、ゆったりと哀愁を漂わせながら弾き進め、中間部では力強さも見せ、再び哀愁を帯びて終わりました。2曲目の「変ホ長調」では、穏やかに情感豊かに演奏しました。速いパッセージでも情緒を失わずに、曲全体の雰囲気をとても素敵にまとめていました。最後の2つの和音が唐突な感じの強音ではなく、もっと豊かな響きを持った和音になると、更に素晴らしい演奏になることでしょう。
次もショパンで、「舟歌 嬰ヘ長調 Op.60」です。この曲は晩年の最高傑作の一つですが、作曲した頃のショパンは、精神的にかなり追い込まれた状態にあったと思われます。ゴンドラが運河をゆったりと進むたゆたう感じがありながら、父親の死による絶望感や愛するジョルジュ・サンドとの間に生じた深い溝、自身の病の悪化など、ショパン自身にも整理しきれない心の中の思いが込められ、ぶつけられているような激しさも感じられます。高尾さんはその辺りを上手く表現していたようで、惹き込まれました。
2人目は同じく愛知県出身の高梨愛未(あみ)さん。高梨さんは愛知県立明和高校音楽科を経て東京藝大に入学しました。高梨さんもショパンが好きなようで、高校時代に聴いて自分も弾きたいと思ったという「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22」を演奏しました。この曲は元々ピアノ・ソロとオーケストラとによるピアノ協奏曲形式で「華麗なる大ポロネーズ」が書かれました。後にピアノ・ソロによる「アンダンテ・スピアナート」の部分が前奏として書かれ、付け加えられて現在の形になりましたが、「大ポロネーズ」の部分のオーケストラが単なる伴奏程度なため、現在ではピアノ・ソロで演奏されることがほとんどです。
高梨さんは、ずっと続く左手のアルペッジョの伴奏に乗せて右手のメロディーが流れる「アンダンテ・スピアナート」の部分を、とても滑らかに、流れるように演奏しました。装飾音がふんだんに施された右手のメロディーを、煌めくような音色で奏で、聴く者を惹きつけていきます。ファンファーレで始まる「大ポロネーズ」の部分は、ポロネーズの力強いリズムと題名どおりの華麗さを一所懸命に表現しようとする姿が伝わってきました。この曲に対する愛情も随所に感じられました。
3人目は竹内麻美(まみ)さん。竹内さんは東京藝大附属音楽高校を経て東京藝大に入学しました。演奏したのは、ラフマニノフの「楽興の時 Op.16」から4曲。この曲が大好きで、全6曲の中から時間の関係でどれを弾くか選ぶのに、迷いに迷ったそうです。6曲それぞれが独立して演奏されてもいいコンサート用の作品で、技巧的にも難易度は非常に高い曲です。
「第1番 アンダンティーノ」では、左手の重音による伴奏に乗せて奏でられる切な気なメロディーや、その後に現れるきらびやかな音型を、非常に上手く表現していました。ロマンティックで抒情を湛えながら、そこに溺れずにさらりと弾きました。「第4番 プレスト」は、この6曲の中では最も演奏される機会が多いのではないでしょうか。速いテンポで始まる激しい音楽を、とてもいいテンポで、重苦しくなく軽やかに演奏しました。「第5番 アダージョ・ソステヌート」は、穏やかな感じが全体を覆っている音楽ですが、哀愁を帯びた演奏で、懐かしさも感じさせてくれました。力強く始まる堂々とした音楽の「第6番 マエストーソ」では、力強さも細かさも上手く表現し、スケールの大きさを見事に捉えていました。竹内さん本人のスケールの大きさも伺わせるラフマニノフでした。
アンコールには出演者3人が登場して、6手連弾にパーカッションも加えて楽しく演奏して幕を閉じました。
溌剌とした若者たちの情熱を感じることができたコンサートでした。
(K.Y.)
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