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小井土 文哉 ピアノリサイタル 開催レポート
《2018年 日本音楽コンクール 入賞者シリーズ》
2019年12月23日(月) 開場18:00 開演18:30
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 クリスマスのイルミネーションが表参道の街を彩る12月下旬、2018年日本音楽コンクール入賞者シリーズとして小井土文哉さんのピアノリサイタルが開催されました。今回のリサイタルでは、バッハ、ブラームス、スクリャービン、シューベルトとタイプの異なる作曲家の作品によるプログラムが披露されました。各々の雰囲気を絶妙に弾き分け、会場の空気を変幻自在に作り出していく彼の音楽に、会場からは度々ブラボーの声が上がっていました。

 前半1曲目には、J. S. バッハ『平均律クラヴィーア曲集第1巻』より《第4番 嬰ハ短調》

BWV849が取り上げられました。力みのない美しい音色によって生み出される神聖な世界に、自然と引き込まれていくようでした。ブラームスの《創作主題による変奏曲 ニ長調》op. 21-1では、乾いた土が水を吸うように心に染み入る優しく温かな音楽が印象的でした。3曲目は、スクリャービン初期の作品《ピアノソナタ第2番 嬰ト短調》op. 19「幻想ソナタ」。スクリャービンは旅先で出会っ

た海の情景からインスピレーションを得てこの曲を書いたとも言われますが、彼の演奏はまさに音の波が押し寄せてくる様子を想像させるもので、その繊細かつダイナミックな演奏は圧巻でした。スクリャービン後期の作品、詩曲「焔に向かって」op.72でも、作曲家特有の神秘的な空気が見事に表現されていました。

後半は、シューベルトの《ピアノソナタ第21番 変ロ長調》D. 960が取り上げられました。この曲は、シューベルトが死の2週間前に作曲した最後のピアノソナタです。諦念のなかに垣間見える希望や激情が切なく響き、長大かつ深淵なシューベルトの作品世界に時を忘れて浸ることができました。アンコールには、同じくシューベルトの《即興曲 変イ長調》op. 142-2が演奏され、満席の会場から熱い拍手が送られました。全体を通し、芳醇なコース料理を堪能したような気分にさせてくれる充実した2時間となりました。

(Y. T.)

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