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石井 園子 ピアノリサイタル 開催レポート
《 東京藝術大学 表参道 フレッシュコンサート Vol.53 》
2019年10月18日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」
東京藝術大学にゆかりのあるピアニストによるコンサートシリーズに、石井園子さんが出演しました。同大大学院を修了後、文化庁の海外研究員としてドイツに留学、現在は演奏活動と並行して後進の指導もなさっています。演奏会はフォーレでスタート。穏やかさと激情が交互に表れる〈ノクターン第4番〉は、導入を緩やかにし、感情の起伏がとても明確です。もの悲しい旋律で始まる〈舟歌第1番〉は、会場の特別な静寂とともに孤独な魂を感じさせました。
続いて演奏したのは、モーツァルト〈アレグレットによる12の変奏曲〉。テーマはトリルを伴いながら上昇する愛らしい旋律ではありますが、どこか憂愁を思わせます。
前半最後に取り上げたのは、ショパン〈幻想曲〉。とても落ち着いた長い呼吸で、自由と抑制する部分のとバランスがとられた演奏です。
後半は大曲、シューベルト最晩年の作品《ソナタ第21番D960》です。病に対する不安、追憶、希望など、揺れる心情をに表現。一音一音端正に注意を払い、静かに聴き手に訴えかける音楽でした。
アンコールを前に、9月末に逝去したピアニスト、パウル・バドゥラ=スコダへ哀悼の意を表しました。石井さんは彼の名を冠したコンクールに参加し、第2位を受賞した経験をお持ちです。指導を受けたり、直接話をする機会に恵まれたと言い、言葉を選びながら思い出を語りました。「“音楽は指で奏で、耳で聴くものではなく、心で奏で、心で聴くもの。マザー・テレサが世界中に愛を届けたように、私たち音楽家は音楽を通じて愛を届けましょう”という、彼の言葉が深く心に刻まれています。今後も志を持って音楽を学び続けたい」と石井さん。アンコールには、リストの〈コンソレーション第3番〉が演奏されました。
(R.K.)
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