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斎藤 龍 ピアノリサイタル 開催レポート
ソナタという芸術Vol.2 「ベートーヴェンの心を覗く」
2019年9月25日(水) 19:30開演 19:00開場
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
演奏活動のほか、東京藝大、洗足音楽大学、沖縄県立大学で講師を務め、音楽朗読劇の舞台作品にも出演するなど活動の域を広げているピアニスト、斎藤龍さんのリサイタルが行われました。ベートーヴェンをライフワークとしており、2011〜2013年にはピアノソナタ全曲プロジェクトを開催し、チューリッヒでの留学時代に知己を得た滝千春さん(ミュンヘン放送管弦楽団コンサートミストレス)とのヴァイオリンソナタ全曲プロジェクトは現在進行中。念願だったという後期ソナタ3曲と《6つのバガテル》を通じ、“ベートーヴェンの心を覗く”プログラムです。まずは第30番。この作品をご自身の言葉で「ベートーヴェンのピュアな心を見ることができる」と紹介されていますが、混じり気のない幸福感に満たされた第1・3楽章の響きが印象に残る演奏でした。
続く第31番は、ベートーヴェンが抱えた深い孤独が伝わってくるもの。苦しみに立ち向かいながらも第1楽章の主題のような穏やかさへの憧れなど、心の動きを表現していきます。
休憩を挟んで演奏されたのは、第30番の素材となった《6つのバガテルOp.126》。最後の小品集とはいえ、ベートーヴェンが晩年に置かれた状況のように重苦しいものではなく、穏やかな心境と明るさが感じられます。
そして最後は、第32番。強靭なタッチと自由な流れのなかに人生の悟りを思わせる演奏。作曲家は人間のあらゆる感情を表現していますが、斎藤さんのベートーヴェンは美しさのみを求めた音楽で終わるのではなく、副題に込められた思いのように心の核心に迫るものです。演奏後、拍手に応えて再びステージに戻ったときの達成感に浸った表情も印象的でした。
(R.K.)
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