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ファンズワース・ユリエ & 武岡 早紀 ランチタイムコンサート
開催レポート
東京藝術大学ランチタイムコンサート2019 in 表参道
<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.7>
2019年9月20日(金) 12:00〜13:30(11:30開場)
会場:カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
9月20日の東京芸術大学ランチタイムコンサート2019 in表参道〈大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタルVol.7〉はファンズワース・ユリエさんと武岡早紀さんのご登場でした。まず演奏されたのはファンズワース・ユリエさん。アメリカのオレゴン州、テキサス州を拠点に活躍してきた若手ピアニスト、ファンズワースさんはショパン《24の前奏曲Op.28》、カバレフスキー《ピアノソナタ第3番へ長調Op.46》、ラフマニノフ《練習曲「音の絵」ニ長調Op.39-9》を選曲。24の前奏曲は、ショパン自身もいくつか選んで弾いたり、順番を入れ替えて演奏していたこと、そして24曲は人間の全ての感情を表しているようだとご説明されました。雰囲気を曲ごとに絶妙に作り上げ、大河のように流れ込む表現豊かな音楽が印象的でした。続くカバレフスキーのピアノソナタはシンプルな旋律とシリアスな場面転換が面白く、軽快なタッチが独特な世界観を描き出されました。「音の絵」は天才ピアニストとしてのラフマニノフが感じられる作品。冒頭は鋭い和音掴みで始まり、曲を通してリズミカルに和音が現れます。溌剌とした演奏で、和音の構成音がよく響き、引き締まった演奏でした。アンコールにはガーシュウィン《3つの前奏曲》より第1番を披露されました。
次に、武岡さんがシューマン《3つの幻想小曲集Op.111》を演奏されました。精神的に苦しんでいた晩年に作曲され、渋みのある円熟した作品であるとお話されたように、ストレートに感情を表現するというより、複雑な感情に丁寧に寄り添う演奏。音の強弱を超えた表現で、シューマンの繊細さや、静かでありながら心のうちにある情念が聴き手の心に迫ってきました。《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22》は20代の若きショパンが作曲した曲。たゆたう左手に端正な右手が美しいAndante spianato、同音連打のファンファーレで始まるPolonaise、華やかで開放的に歌が奏でられ、瑞々しい感性で紡ぎ出される音楽に心を掴まれました。ショパン晩年の作品である《バラード第4番へ短調Op.52》は、音色や打鍵のコントロールが徹底され、ショパンの心の憂いや内省が感じられ、哀愁に満ちた演奏でした。シューマン、ショパンと、高い集中力と豊かな音楽性でまとめられ、武岡さんの曲への思いが伝わってくるようでした。シューマン=リスト《献呈》をアンコールに披露されました。今後のお二人のますますのご活躍が楽しみです。
(W.T.)
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