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林 秀光 記念コンサート Vol.7 開催レポート
〜Homage&Gratitude〜
2019年9月4日(水)19:00開演
出演:渡部僚子、田村緑、今井正 (各ピアノ)
会場:
カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ 」

 

 

 桐朋学園大学の名教授として多くの優れたピアニストを育て上げた、故林 秀光先生の門下生によるコンサート・シリーズの7回目。林秀光先生の薫陶を受けた3人のピアニスト、渡部僚子さん、田村 緑さん、今井 正さんの登場です。

 当夜のプログラムノートには、3人それぞれの、今も忘れることのない先生との大切な思い出、心の奥に刻まれた先生のお言葉の一つひとつなどが綴られていました。それらが後のピアニスト人生にとってどれだけ大きな支えとなっているのかが、行間のすみずみに表れているように感じました。以下、プログラムノートより少しピックアップしながら、演奏のもようをお伝えしたいと思います。(『』内がピックアップした部分)

 最初の奏者は渡部僚子さん。柔らかなドビュッシーの〈月の光〉で、会場を優しく包み込みました。2曲目のフランク〈前奏曲コラールとフーガ〉は、林先生と勉強した大学の卒業試験の曲とのこと。神聖な空気感、一心の祈り、静けさ……、突き抜けるように高い天井の、厳かな礼拝堂の情景が浮かび上がってくるかのようでした。渡部さんは卒業試験前日の林先生からの励ましを、こう綴っています。

 『「心からの自分の音楽をやりなさい。」そして、「大事なことは、アンタが、弾くことを楽しむこと! enjoyだよ!」というお言葉。……私は、どんな足の竦むステージでも、ポジティブな気持ちで、臨むことが出来ました。』

 続いての奏者は田村 緑さん。高校時代に林先生が弾いてくださった、往年の名ピアニストたちによる編曲作品の思い出、さらには田村さん自身がそれを演奏した時の思い出を、次のように綴っています。

 『先生の十八番、サン=サーンス/ゴドフスキー編曲「白鳥」を演奏した際、先生は珍しく満面の笑みを浮かべられ「あんた、なかなか、いいじゃない」とおっしゃいました。小躍りするほど嬉しかった思い出から、今日のコンサートでは、先生のレッスン室の楽譜棚に眠っているであろう作品を、皆さまに聴いて頂きたい!と思い立ちました。』

 こうして今宵のために田村さんが厳選した1曲目、J.S.バッハ/W.ケンプ編〈目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ〉コラール前奏曲BWV645の、アレンジの素晴らしさ。主旋律と同時に歌われる中音域の美しい旋律がとてもよくマッチしていて、これにはバッハも微笑むのではないでしょうか。2曲目のベートーヴェン/A.ルービンシュタイン編〈トルコ行進曲〜「アテネの廃墟」より〜〉は、威風堂々、有名な原曲の良さを引き出す楽しい工夫がいっぱいでした。3曲目のM.グールド〈ブギウギ・エチュード〉は抜群のノリ。ラストに演奏したのは、林先生のアメリカ時代に思いを馳せて、ガーシュインの〈ラプソディ・イン・ブルー〉。ジャズ感満載のテイストに、時折哀愁を漂わせ、とにかく格好良かったです。

 最後の奏者は今井 正さん。選曲は〈マズルカ作品59-2, 3〉、〈12の練習曲 作品10〉とオール・ショパンで、きわめて個性豊か、大変魅力的な演奏でした。ところが、意外にもショパンは、林先生からは封印されていたのだそうです。今井さんは当時をこう振り返ります。

 『ショパンは先生の言葉で表現すると「あんたの不得意分野」……ショパンに対するコンプレックスを抱えていた私、マズルカ作品59の第1番を先生のレッスンを受けずに門下生の発表会で演奏をし、「マズルカをよく考えたね、面白い」と厳しい面持ちでおっしゃられました。……そして、先生がよくおっしゃっていた「多彩な音色がだせるのだから、あとは大きなものをまとめる構成力がなきゃいけないね」という言葉を受け、一度諦めた、ショパンの〈12の練習曲〉を弾かせて頂く決意を致しました。』

 こうして演奏した大胆なマズルカ、圧倒的テクニックと自由闊達な解釈の練習曲で、会場をすっかり魅了しました。

 最後に、アンコールは3人そろっての6手連弾。美しくしっとりと、ラフマニノフの〈ロマンス〉が演奏されました。同門のピアニストが、長い時を経て、またひとつの場に集い、共に音楽を奏でる。素晴らしいことですね。これからも続くであろう、このシリーズの今後が楽しみです。

(H.A.)

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