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川地 咲由里 & 東海林 茉奈 ランチタイムコンサート 開催レポート
東京藝術大学ランチタイムコンサート2019 in 表参道
<大学院音楽研究科修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタル Vol.5>
2019年
7月23日(火) 12:00〜13:30(11:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 

 

 今回の東京藝術大学修士課程1年生によるピアノジョイントリサイタルは、演奏者の作品への真摯な対峙が実現していた、またとない意義深い演奏会でした。

 前半は、川地さんのショパン《舟歌 嬰へ長調 Op.60》とラヴェル《鏡》より第3曲「洋上の小舟」の演奏で始まりました。「船」をモチーフにした二作品の色合いの違いは演奏者によって巧みに弾きわけられ、前者は水路の上でゴンドラに揺られながら何かを懐かしむ様子を、後者は大海原の上に浮かぶ小舟の孤独感を清新な音色で表現されました。第4曲「道化師の朝の歌」では楽観と悲観の二面性が見事に創出され、華麗なテクニックで聴衆を魅了しました。最後に、リスト《巡礼の年》第1年「スイス」S. 160より第6曲「オーベルマンの谷」では身を乗り出してドラマティックに演奏する川地さんの姿に、深い感銘を受けました。

 後半は、東海林さんによってオール・ショパンのプログラムが演奏されました。《ワルツ へ長調 Op.34-3》と《エチュード Op.25-6》では軽快かつ輝きを放った音の粒が降りかかってくるようでした。続いて《ノクターン 第17番 ロ長調 Op.62-1》と《ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61「幻想」》は内省的な音色で、「祈り」と表現した演奏者の思いに静かに寄り添いながら音楽に浸ることができました。最後に演奏された《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22》ではショパンの魅力が詰まっているこの作品にどこか哀愁感を含ませて、作曲家の繊細な心の内奥を豊かに歌い上げました。

 アンコールは連弾でモーツァルト《4手のためのピアノ・ソナタ K. 381》より第3楽章が楽しく演奏され、これからの音楽界を担う二人の若手演奏家への期待を感じずにはいられませんでした。

(M.S)

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