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Concert of Sumiko Minemura's Works
峰村澄子 作品展 IX 開催レポート
デュオ作品による
2019年7月21日(日) 14:00時開演 13時30分開場
東京文化会館小ホール (JR上野駅 公園口 徒歩1分)
出演:
堀江 真理子、河内 純、寺田 悦子、渡辺 規久雄、楊 麗貞、田代 幸弘、(以上Pf.)
後藤 一宏、梶村 英樹、(以上Fg.)

 本日は、長年デュオの作品を輩出されてきた作曲家峰村澄子さんの作品展。会場の東京文化会館小ホールでは、美しい幾何学的な形のステージに、カワイのコンサート用のグランドピアノが置かれ、お客様の様子からも、沢山の方が峰村先生の作品を愛し今日を楽しみにしていたという空気が伝わりました。

 峰村さんの作品は、終演後のトークでご自身も語っていらした通り、日本人としてデュオ作品と向き合うことを意識した独特の味わいで、旋法の使い方や音程の重なりを緻密に計算したからこその、東洋的な雰囲気が漂っていました。また演奏会のコンセプト自体が「個展」となっている通り、作品の並び順等にも演奏会全体の流れへの配慮を感じるものでした。

 はじめはピアニストの堀江真理子さんの演奏で、峰村さんの師匠にあたる貴島清彦氏による作品《古代舞踊―白像の歌―》が紹介されました。まさにメシアンなどの名だたる現代音楽の作曲家達による、東洋的な旋法・音響の技術が散りばめられた作品で、今回の演奏会の全体像を決めるものでした。

 

 次からはピアノ・デュオの作品が並びます。楊麗貞さんと田代幸弘さんによる《千歳》は、前の貴島氏の作品の世界観を受け継いだような、東洋的な響きの熱烈な追究が伝わってくるような作品、そして寺田悦子さんと渡辺規久雄さんによる《わらべうたによるファンタジア》はそうした独特の音響を残しつつもわらべうたの旋律に親しみの湧く作品でした。

 さらに前半の最後にはピアノ・デュオだけではなくファゴット・デュオの作品《2本のファゴットのための小組曲》が披露されました。ここでは何と、長年自作のリードでファゴット演奏に励んできたという後藤一宏さんとカワイ音楽振興会の事務局長である梶村英樹さんが登場されました。峰村さんがピアノ・デュオにもよく用いるユリ(2音間の揺らぎ)や雅楽にモデルをとった技法も含む、西洋音楽ではなかなか見られない音色の作品でしたが、お2人のファゴット奏者が熱心にこの楽曲の世界を再現されている様子が伝わってきました。

 後半の冒頭は比較的最近の作品にあたる《風月詠歌》。堀江真理子さんと河内純さんによるデュオ演奏でしたが、楽章ごとに美しい日本の風景が浮かぶような、表情豊かな作品でした。次の《山水図鑑》は寺田悦子さんと渡辺規久雄さんによる演奏。プログラムノートにも記されていたような2つの楽章のコントラストが印象的な楽曲で、お2人の息の合ったアンサンブルを楽しむことが出来ました。

 最後のプログラムとなりましたのは、楊麗貞さんと田代幸弘さんによる《四つの詩》。今回演奏された作品の中でも比較的規模の大きなもので、楽章構成もあたかも西洋音楽の交響曲や協奏曲を聴いているかのような、堅固なものでした。その一方で峰村さんが作風として貫かれた日本的な響きも際立っており、特に終楽章のオリエンタルな響きとスリリングな楽曲展開の妙業は、見事なものでした。

 

 今回の作品展は9回目とのこと。作曲というのが非常な着想と労力を要する中、これだけの作品数を常々輩出されてきた峰村さんには、大きな拍手が贈られました。長年ご自分のスタイルを守ってきた峰村さんの、作曲への真摯な姿勢に感銘を受けた演奏会でした。

(A.T.)

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